- 2010年2月11日 16:23
- 小川 悟
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ニューヨーク公共図書館は、単に本を借りるための場所ではない。名もない市民が夢を実現するための「孵化器」としての役割を果たしてきた。ここからは、アメリカを代表するビジネス、文化、芸術が数多く巣立っている。
/『未来をつくる図書館―ニューヨークからの報告―』(菅谷明子著)
以前、このコラムでご紹介した当社内で運営中のWeb社内報に、今月新たなコンテンツが加わりました。その名も「推薦図書コーナー」とそのままなのですが、当社の全スタッフ200名が、過去に影響を受けたビジネス書や自己啓発本などを自由に投稿できる仕組みとなっています。社長の発案で、すぐに導入したのですが、早速幾つか推薦が挙がってきています。元々書棚(cf.こちらのコラムでご紹介しています)があるので、社費で購入したものや各自が持ち寄った本が並んでいたりしますが、この取り組みで当社スタッフの読書熱がさらに高まることを期待しています。
この推薦図書共有の取り組みですが、ただ漫然と「面白いよね」という共有ではなくて、もちろん普段の仕事に活かせる、個人の考え方や行動に対して影響を与えるような本を推薦してもらうようにしています。本田直之氏の『レバレッジ・リーディング』の中で、読書は「経済的行為」「投資活動」と表現され、「本を読んで得た知識をビジネスに生かすこと」で1500円で購入した本は最終的には15万円の利益を生むとも書かれています。実際のリターンの度合いを定量的に割り出すことは難しいでしょうが、確かに言われてみれば、世界中の経営者や第一線で活躍するビジネスパーソンの書かれた体験談やノウハウ、考え方等、言わば成功哲学のようなものが凝縮されたものが1500円程度で買えるとなると、最もリスクの少ない投資と言うのも頷けます。
ちょうど先週末にはリーダー向けの研修会なども開かれ、外部環境分析などを含めた自部署の戦略策定が各部門で行われたばかりで各自の知識欲も高まっていた矢先のことでした。当社でも自社の経営者や役職者が今までどのような本を読んできたのかということを興味深く調べては、実際に購入したスタッフもいます。こうした取り組みで得られる成果を、お客様へ対する提供価値へと変えていきたいと思います。
さて、推薦図書の話を差し上げたので以下は余談となりますが、関連の話題をしたいと思います。
コラムのタイトルにも起用した「電子書籍」。昨年よりその文字を何かと目にすることが多くなりました。先月には、米Appleが「iPad」を発表したり、書店に行けば、『キンドルの衝撃』、『紙の本が亡びるとき?』など、出版関係者からすれば穏やかならぬタイトルの書籍が並んだりし始め、当の日本の出版界でも出版21社が電子書籍市場での連携強化を目的として、電子書籍法人を設立するといったリリースなども出されたのが印象的でした。また、最新号の「日経トレンディ」の特集は、「次世代ネットの衝撃 クラウド&Twitter」で電子書籍についても触れられており、 2010年は「電子書籍元年」とも言われたりしているようです。
cf.デジタル パブリッシング フェア2010 - 新設!「電子書籍端末 ゾーン」
http://www.digi-fair.jp/
実際私も、iPhoneに電子書籍リーダーの一つ、「i文庫」というアプリを入れています。このアプリは、インターネットの電子図書館「青空文庫」にアップされている、現状8800ほどの書籍データ(著作権が切れているもの)を無料で購読することができるものです。普通の文庫本と比べて目が疲れるといった意見も聞きますが、栞を挟む機能などがあったり、慣れると大変便利です。今までラッシュアワーの電車内で片手にかばん、片手に文庫本を持って、片手で文庫本をめくる技術を習得して何とかして本を読もうとしていたものが、こうしたアプリを使えば労せず読むことができます。複数冊同時読みといったことも、普通なら何冊も携行すると重たい書籍ですが、やはりiPhone1台で足りてしまいます。
この「青空文庫」――、『インターネット図書館 青空文庫』 (野口英司著)という書籍に青空文庫収録の作品が収録されたDVDが付いているのですが、刊行された2005年当時の作品数が4843作品と今では倍近くまで増えています。この膨大な作品データの入力や校正作業を行うのは、「青空文庫工作員」と呼ばれるボランティアスタッフの方たちです。
この5年間の間に著作権の保護期間が過ぎたものがこれだけ多くあるということでしょう。現在の日本の著作権の考え方(ベルヌ条約)では、保護期間が著作者の死後50年ということで、2010年は1959年までに没された作家の作品ならばインターネット上に公開可能ということになります。現在、JASRAC(日本音楽著作権協会)や鳩山首相などはこの期間を70年に引き延ばそうとする考えを持たれているようですが、著作権周りの話は日本の枠だけで考えられるものでもなく、大変複雑で難しいしがらみもあり、議論が割れています(cf.「著作権の保護期間」/Wikipedia)。
ちなみに、仮に保護期間が50年から70年に延長されるとどういうことになるかを分かりやすく有名作家を例に言えば、現在ネット上で無料で購読できている太宰治(1948年没)が2019年まで、坂口安吾(1955年没)が2026年まで見ることができなくなるということになります。
cf.
・「著作権保護期間70年への延長実現に最大限努力」鳩山首相が明言(INTERNET Watch,2009年11月18日)
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20091118_329858.html
・aozora blog: 青空の行方/なにゆえの著作権保護期間70年延長か(富田倫生氏運営,2004年12月7日)
http://www.siesta.co.jp/aozora/archives/001717.html
・ミッキーマウスは誰のもの? 著作権の「寿命」を争う裁判が最高裁で始まる - 米国最新IT事情(ITpro,2002年10月15日)
http://itpro.nikkeibp.co.jp/members/ITPro/USIT/20021012/1/
また、ニンテンドーDSの「DS文学全集」なども電子書籍としての役割を果たしていると思いますが、こちらにも青空文庫創設メンバーの一人である富田倫生氏が絡まれています。富田倫生氏は97年の「青空文庫」創設期には既に電子本に興味を持たれていた方で、 先の『インターネット図書館 青空文庫』の中で「青空文庫」について、「著作権の権利は尊重する、と同時に、保護期間を終えた著作物は、みんなが自由に、手軽に、広範囲に利用できるようにしていく。これが青空文庫の目的といってもいいだろう」とも言及されています。
【著作権制度の目指すもの】
青空のぬくもりは、誰もが共に味わえる。
一人があずかって、その恵みが減じることはない。
万人が共に享受して、何ら不都合がない。
/『インターネット図書館 青空文庫』(野口英司著)
以上のように電子書籍の台頭によって一層身近になった読書ですが、電子書籍やクラウド(・コンピューティング)のような発想は今に始まったものではありません。
電子時代の到来で、図書館が電子本を所蔵しパソコンでアクセスすれば利用できる「電子図書館」構想が話題になっています。(中略)実現すれば、利用者がインターネットを通じ、図書館を訪れることなく容易に、効果的に検索し、画面上で本を読むことができる日がやってくるのです。
/『トーハン週報4/2号別冊 新版 よくわかる出版流通のしくみ』(「しゅっぱんフォーラム」編集部 [株式会社トーハン 広報室内],1999年4月2日発行)
例えば、『新版 よくわかる出版流通のしくみ』という小冊子は99年に発行されましたが、2001年の「e-Japan戦略」に先駆けて上記のような「電子図書館」構想が練られていました。また、その後も以前のコラムで触れた、松岡正剛氏による「千夜千冊達成記念ブックパーティー」でも案内のあった「図書街」構想は、後に「図書街プロジェクトの始動に向けて」というシンポジウムにも発展しました。これはこれで、紙の本の流通に大変革が起こる話ですが、この辺についてはまた別の機会にでも触れてみたいと思います。
以上、余談が長くなりました。最後になりますが、先の『新版 よくわかる出版流通のしくみ』 の結びには、「ありとある出版物の総体がその国の知的生産活動として文化の重要な一翼を形成しています」と書かれています。江戸時代の出版ラッシュの際に日本人の識字率が高かったというようなことも言われていますが、私たちもWeb社内報の「推薦図書」の仕組みを活用して、良い本を紹介してスタッフ間同士で刺激し合い、結果、社内スタッフの人財力や組織力を高めていきたいと思います。
- 2010年1月30日 21:06
- 小川 悟
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今月18日、当社の管理本部(総務、経理部門等)が入っていた分室が、本社の入るビルに移転しました。
cf.本社分室事務所移転のご案内 | ニュースリリース
http://www.freesale.co.jp/company/news/news/post_42.html
これにより、今後業務効率化が図れるといったことはもちろん、より密な連携が図れるようになるので非常に嬉しく思っております。増床ということになるかと思うのですが、内装工事が終わったばかりで、まだ全スペースが座席で埋まっていないオフィス空間を見た際、思わず4年前くらいに本社が移転したときのことを思い出しました。
今回の増床のタイミングで、大きめの会議室も新設されたのですが、従来の会議室と比べるとかなり広くとられ、おそらく定員は60名くらいあると思いますので、今後、リスティング広告の部門などを中心に社外に向けた当社主催セミナーなども活発に行われてゆくのではないかと想像しています。
さて、同じ週の23日には、早速この会議室を借りて、社内向けのセミナーを実施致しました。内容としては、以前に「フリーセル大学」課外授業と致しまして、社外講師の方をお招きしておこなった「ビジネスマナー研修」の補習の位置付けとでもなりましょうか。12月実施時に参加できなかった人も多くいたので、今回はCS部門・管理部門を中心に50名程が参加したものとなりました。

cf.前回のビジネスマナー研修については以下をご参照下さい。
ビジネスマナー研修に参加して、仕事における「守破離」を考えた ~仕事ができる人は基礎がしっかりできている~
http://web-consultants.jp/blog/ogawa/2009/12/post-47.html
このフリーセル大学は、フリーセル大学実行委員会という社内の有志の管理職が集まった組織があって企画・実施が行われているのですが、私は講義が始まる前の前説に当たる部分を担当させて頂きました。
ここで皆に最も伝えたかったことが、「"わかる"と"できる"は違う」ということでした。「ビジネスマナー研修」を行うとなると、どうしても講義そのものは基礎的な内容になりがちです。ともすると退屈するのではないか、またはそのときだけは分かったつもりになって本質を理解しないまま、再現性のない一過性の知識となり、いざという本番で活かすことができないのではないか?といった懸念がありました。
ですので、まずは退屈しないように、朝一最初の講義内容は、「基本敬語能力判定試験」(以下、イメージ写真)を行いました。当社ライティング課に、元国語教師というキャリアを持つ者がいるので、彼に問題の作成と答え合わせ・解説を行ってもらいました。
土曜の朝からテストです。部門を超えて50人が集まっているので、必然的に競争意識に火が付きます。部下の手前、低い点数は取れないと焦る上司もいたかもしれません。点数が周囲と比べて低かった人は「ちゃんと受講しなくては!」という気になってもらえたのではないではないかと思っています。
昼休憩を挟んで、そろそろ眠たくなってくる午後一の講義は「発声」からスタートしました。起立した状態で、口を縦横に大きく開きながら実際のビジネスシーンでよく使われる挨拶の言葉を発声してもらいました。その後、座学を交えながら最後には接客時のマナーということでロールプレイングを行い、他チームとのコミュニケーションを図りながら、名刺交換も含めて一連の会話を行ってもらいました。
そうして朝10時から16時過ぎまで、半日研修を無事に終えることができました。実施後にアンケートを取ったところ、4段階評価の満足度で「大変満足」と「満足」と答えた人が9割以上いたので、まずは胸をなでおろしたといったところです。
よく言われていることであるかもしれませんが、このコラムをお読み頂いている皆さんでも、「わかる」と「できる」は違うと感じたご経験はないでしょうか?
「優先順位を考える」、「主体的に動く」、「ポジティブ・シンキング」、「ホウ・レン・ソウ(報告・連絡・相談)は重要」、「相手の立場に立って考える」、「変化に柔軟に対応する」といったようなことは極めて基本的、かつシンプルな考え方・行動習慣で、そのため『7つの習慣』をはじめとした成功哲学、その他大抵のビジネス書や自己啓発本に目を通しても、言葉や例を変えて焼き直しで語っているように感じられることもあります。
またそれは、企業の求める人物像などにも現れていると思います。優先されるコンピテンシーに多少の違いこそあれ、大体が共通しています。言い換えれば普遍的な物の考え方であるということです。しかし重要だ、意識して行動した方が良いと頭では分かっていても、実態が伴わないといったことは多々あるかと思います。
ここでご紹介したいものが、本田直之氏の『レバレッジ・シンキング 無限大の成果を生み出す4つの自己投資術』他、実に多くのビジネス書・自己啓発本で紹介されている有名な言葉です。
意識が変われば態度が変わる
態度が変われば行動が変わる
行動が変われば習慣が変わる
習慣が変われば人格が変わる
人格が変われば運命が変わる
要は「習慣化させる」ことが重要だということがよく言われています。そこから派生してか、マネジメントの部分では「繰り返し伝える」といったことがよく行われています。私たちも、そういったことは意識し続けながら、まずは習慣化の一環として、名刺サイズのカードを作りました。電話応対時の注意事項等をまとめたものですが、これをデスクの電話のそばなどに置いてもらったり、日々のチーム朝礼時に声に出して読み合わせしてもらったりといった活用イメージをしています。初めの一歩かもしれませんが、まずはこうしたことから取り組んで参りたいと思います。
最後になりますが、私たちWebコンサルティングを行う者として、お客様から対価を頂いて商売を行う以上は、より一層「できる」ことを増やしていかなくてはなりません。多くの経験を積んで企画提案力やクリエイティブスキルを磨き、今以上に問題解決の幅を拡げ、中小・ベンチャー企業向けWebコンサルティングという領域で必要とされている要素に気付き、手に入れ、提供できるようになっていかなくてはならないといった使命感を持っております。
私自身が「習慣化」や行動面で足りない部分も多々あると思っておりますが、自他に対する成長意欲の高い社内のスタッフ同士で刺激・牽制し合いながら、 スピードを上げていければと考えております。今後ともどうぞ宜しくお願い致します。
- 2010年1月 4日 16:24
- 小川 悟
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将来に希望を見出せなかった時代に、龍馬のような挫折して学問も身分もなく、いつも貧乏していた人物が偉業を成し遂げた――人に勇気を与えますよね。どの方向にでも思い切ってチャレンジしていく行動力、生きる意欲というのは、見習っていくべきですね。(津本陽)
/『一個人 別冊 歴史人 坂本龍馬の真実』(KKベストセラーズ)
新年あけましておめでとうございます!
当社は本日4日から仕事始めとなっております。今年もどうぞ宜しくお願い致します。
今回のコラムは、年始一本目ということで少し仕事から離れた内容となりますが、ご了承下さい。
皆様、 年末年始はいかがお過ごしでしたでしょうか。私は、実家に戻ったりしながらも、今年はゆっくりと自宅で年を越しました。昨日3日からは、以前、『坂の上の雲』に触れたコラムでも話題にしていた『龍馬伝』が始まりましたので、20時にはしっかりと帰宅し、テレビの前で放映を待っていました(笑)。皆様ご覧になられた方はいらっしゃいますでしょうか。
この『龍馬伝』、「今回、タイトルに入れた伝というのは、あくまで彌太郎が語る伝」(/「マンスリーみつびし 2009年12月号」)と言うのは本ドラマの脚本を担当された福田靖氏ですが、そこで言われている岩崎弥太郎は現三菱グループの創始者です。
cf.岩崎彌太郎年表 - 岩崎彌太郎物語(三菱グループ)
http://www.mitsubishi.com/j/history/series/yataro/index.html
その岩崎弥太郎を演じるのが、『坂の上の雲』で正岡子規を演じた香川照之さんでした。かたや病に臥しがちで30代半ばで夭逝された俳人・正岡子規、かたや日本の海運業を切り拓き三菱財閥の礎をつくった岩崎弥太郎と、ほぼ時代や場所を同じくして人柄も立場も全く違う二人を好演しているのはすごいと思いました。次回以降も楽しみです。
坂本龍馬と聞くと、司馬遼太郎の小説『竜馬がゆく』を連想する人が多いと思います。「世に生を得るは事を成すにあり」という"竜馬”の名文句が、本文中に度々登場します。33歳という若さで志半ばして刺客の手に倒れた坂本龍馬ですが、その短い生涯の中で維新という大きな事を成し遂げました。
まずは坂本龍馬が残した偉業の中でも、日本発の総合商社、また株式会社とも言われる「海援隊(亀山社中)」の設立に着眼してみたいと思います。「海援隊」と聞くと、武田鉄也さんの在籍されたフォークグループを連想します(『龍馬伝』では、勝海舟役で登場されますね)。
また、もう一人、私たちの業界だと、連想するのは孫正義氏ですね。
cf.ソフトバンク孫氏、Twitterユーザーに(ケータイ Watch,2009年12月25日)
http://k-tai.impress.co.jp/docs/news/20091225_339710.html
上記、鳩山首相に先駆けてTwitterアカウントを開設された孫氏。早速、ご自身のTwitterアカウント上で以下のようにつぶやかれていました。
来年の大河ドラマは、坂本龍馬。私が最も尊敬する偉人です。日本の夜明けのために命をかけた。立派なことだと思います。 事業を通じて少しでも龍馬さんの心境に近づけたらいいなあと思います。(2009年12月25日)
ソフトバンクが2006年にロゴを刷新した際にモチーフとしたのが、前出の、坂本龍馬の設立した「海援隊」の隊旗だそうですね。
cf.ソフトバンク、新ブランドロゴ発表(ITmedia +D,2006年8月16日)
http://plusd.itmedia.co.jp/mobile/articles/0608/16/news025.html
少しここで話を脱線させますが、実は私10年来のドコモユーザーですが、年末年始に向けてついにiPhoneを購入しまして、その関係でiPhoneの話題に触れてみたいと思います。以前コラムに書いた、「楽天Webディレクション&デザイン2009」に行ったときに既に購入フラグは立っていたのかもしれませんが(笑)、同僚からの強い勧めもあって購入しました。
こういう業界にいて、他の同僚と比べると最新デジタル機器に疎い方である私がなぜ購入するまでに至ったのか?ポイントは3つありました。仕事と大きく関係がある話題ではなく、個人的な趣味の話となりますが。
1. クラウド(コンピューティング)への理解のための入門機としてのスマートフォン体験
まず手始めに、デフォルトでインストールされているカレンダーアプリと、Googleカレンダーとの同期を図ってみました。これは大変便利です。Googleをはじめとした各社提供のWebサービスに対し、iPhone本体がクライアント機(あたかも子機、リモコン)のような位置づけで操作・管理しているような気になれました。この辺はこれからもっと活用の幅が広がってくるのかと考えています。
2. UI (User Interface) 、UX(User Experience)、インタラクションデザイン等の理解のための体験
簡単に言えば、あの独特なインターフェースを、実際に自分のような最新機器に疎い者が使うとどうなるか?ということを試しました。まず手始めに、それまではPCかモバイルからしかアクセスしたことのなかったTwitterに専用アプリでアクセス。同僚が利用しているのを傍目で見ていたときには感じ得なかった「体験」が得られました。
そして何よりも一番驚いたのが、日本語入力の際に便利な「フリック」入力機能です。ポケベルが登場した頃に、独特な文字入力方法に感激したときの驚きを超えました。このフリック入力、どのようなものかをご説明するのに、百聞は一見にしかず、以下の動画を是非ご覧下さい。なかなかこんな早くは入力できません(汗)。
http://www.youtube.com/watch?v=kVy1p0v0Pow
この辺の内容は、以下に詳しく掲載されていました。
cf.DESIGN IT! : 徹底した直接操作
http://www.designit.jp/archives/2008/09/vol1_iphone_2.html
3. メディア(特に、広告媒体として)の可能性について消費者としての体験
iPhone用アプリに既存の媒体(産経新聞等)や私企業が参入するケースや、実際に広告配信を行うケース、また、「クックパッド」のようなWeb2.0型のサービスや、「食べログ」のようにさらにGPSと連動したサービスが携帯端末に入ったときに初めて得られるユーザー利便性がもたらす経済効果など、通常の携帯電話では考えられなかったような可能性があるように感じました。
上記の3つの体験を、実際に肌で感じてみたかったということが挙げられます。
話しを戻します。思い返せば、96年にヤフー株式会社が設立、数ヵ月後に「Yahoo! JAPAN」が開設され――、私はまだ学生で、当時丸の内にあった某広告代理店で派遣スタッフとして働いていたことがありました。当時は「インターネット」という構造さえもよく把握していないのに、先輩スタッフに教えられるがままにパソコンを使用していたものでした。まさに、例えばリクルート運営の「ISIZE(イサイズ)」がまだ「Mix Juice」という名称だった時代ですが――、やがてサイト内のコンテンツ拡充が進み、後に「ポータルサイト」と一般的に称されるようになりました。
この「ポータルサイト」、「港」という意味を有しており、インターネットに繋いだ際の入口ページとされることを目的としたサイトモデルとして使われているインターネット用語です。坂本龍馬も商取引をする上で港に着目し、海援隊を結成しました。こじつけかもしれませんが、『龍馬伝』第1回目で下士としての生い立ちが描かれた坂本龍馬、地下浪人の家庭に育った岩崎弥太郎、そして少年時代は貧しかったという孫正義氏と、皆、苦しいスタートから始まって最終的に立身された方たちなのだなと感じました。
私も是非あやかって、といきたいところですが、現時点ではどれもあまりにもスケールが大きい話過ぎて、正直ピンときてはいません(汗)。ですが、新年、新たな気持ちでスタートを切りたいという、やる気に満ち溢れた気持ちになれました。
今度の大河ドラマは、個人的には是非、渋沢栄一のドラマを見てみたいと思っています。
岩崎弥太郎率いる郵便汽船三菱会社の海運独占を嫌い、アンチ三菱連合として三井と組んで共同運輸を設立、後、熾烈な値下げ競争となって最終的には合併して日本郵船となり、後世「日本資本主義の父」と呼ばれた渋沢栄一のドラマです。大学の卒業論文では、文学部在籍ながらも縁あって?渋沢栄一に言及することになって少し本を読んだことがある程度ですが、自分の興味の対象にすっぽりと収まっています。
当時、輸送といえば、海上しかなく、その海運は三菱の手による他はない。三菱の船にのせると、保険も三菱でかけるように要求され、倉庫もまた三菱のものを使わねばならない。(中略)商社である三井物産では、貨物の取引量が大きいだけに、三菱への支払いも、年七十万にもなる。(中略)三井でさえ、こうした状態だから、他の事業家たちの立場は、さらにあわれであった。まるで三菱をもうけさせるために商売をしているようなことにもなる。
/『雄気堂々(下)』(城山三郎著)
若かりし頃は不条理な世の中に不満を感じて尊皇攘夷思想に傾倒するものの、諸事情あって幕府側の家臣に説得され、徳川最後の将軍・慶喜の幕臣として大政奉還を迎え、新時代に突入していった後の渋沢栄一のドラマは、坂本龍馬や岩崎弥太郎のようにドラマティックでありながらも、二人とはまた別の切り口、視点で近代ビジネスを切り拓いていったという点で非常に興味深く感じます。
さて、『龍馬伝』の感想はここまでとして、話を身近なところに戻させて頂きます。
今年2010年、また新しい10年がスタートしますが、そんな折、当社も創業10年目を迎えました。 ここまで順風満帆!?に来れたのも、ひとえにお付き合い頂いているお客様のお陰だとつくづく感じます。今でこそ多くの関係者の方々にお世話になっていますが、創業して間もない頃は、私たちスタッフとお客様とのやり取りが仕事のほぼ全てでした。私は創業11ヶ月目の2002年7月に入社しましたが、当時はまだ全社員6名しかおらず、オフィスも渋谷区松涛にあるマンションの一室でした。その頃からお付き合い頂いている歯科医院の院長先生など今も多くいて下さって、本当に嬉しく思います。
現在では、各社様々なサービスが台頭してきたこうした法人向けインターネットサービスで、10年近くもの間、他社に乗り換えることなくお付き合い頂いているお客様がいらっしゃることがどれだけすごいことかと思えるか、個人的な感傷も多分にあるかと思いますが、創業10年目を迎えてますます切に感じました。
今一度、私たちの原点であった「CS(顧客満足)」に立ち返り、強く推進していきたいと考えております。まだまだ至らぬ点が多々あり、ご迷惑をお掛けすることもあるかと思いますが、今後とも何卒ご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。まずは年始のご挨拶として、結びと代えさせて頂きます。
今後とも、当「Webコンサルタント.jp」を宜しくお願い致します。
- 2009年12月23日 16:17
- 小川 悟
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「世界中のサッカー少年がペレになりたがっている。だから私には、サッカー選手がどういうものかだけでなく、大人がどういうものかを示す責任がある」(ペレ)
/『写真で読む世界の戦後60年』(エリック・ゴドー著)
いよいよ、私としては2009年最後のコラムとなります。今年、新年明けてすぐに、個人的なテーマとして「学習と成長の視点を持つこと」というものを挙げておりました。正直いろいろなことがあって100点とは言いにくいですが、ある程度は取り組め、それなりの結果は出せた部分もあったのではないかと思っています。
先週末の土曜日は、朝一番から研修がありました。「学習と成長の視点を持つこと」に基づいて、今期期初から始めた「フリーセル大学」(cf.「「フリーセル大学」4月開校! ~"学習する組織"確立のための企業内大学設立に向けて~」)の一環としての目的もあって、当社のお客様であるKEE'S様を講師としてお招きし、夜の7時過ぎまで当社スタッフを数十名向けにみっちりと研修をおこなって頂きました。KEE'S様が派遣される講師の方の条件としては、公式サイトから抜粋すると「元局アナ・局契約アナで、現在もアナウンサーとして活動している人材」に限定されており、今回もアナウンサー直伝の、話し方や発声、敬語、その他一般的なビジネスマナーについて網羅的に学ばせて頂きました。
■当社内で行われた研修前の事前説明風景
当社社長の木村からの助言もあって今回の研修実施に至ったのですが、今のような時期だからこそ、こうした基礎を学ぶことは重要だと実施後改めて思いました。当社は今、「中小・ベンチャー企業向けWebコンサルティングの分野でNo.1になること」を目指しています。そうした中、プロフェッショナルとしてのWebコンサルタントの輩出は責務となります。ビジネスシーン以外の場所で「コンサルタント」についての印象を尋ねると、いまだに「かっこいい」「怪しい」と意見が割れたりすることもありますが、それだけ結果ありき、そして個人に依存した属人的な職業と言えるでしょう。まして「Webコンサルタント」となれば比較的新しい概念ですし、より正確な意味を包括した定義が確立するまでは今しばらくの時間がかかると思われますが、少なくとも現時点で私がイメージする「Webコンサルタント」は文理双方に明るくポジティブな問題解決思考があり、コミュニケーションスキルに長けた、人間として魅力的な人であってほしいと考えています。
Webコンサルティングの仕事は、特性上、クライアントとの中長期的なお付き合いは必須になると思います。その中で個人的に仲良くなって、気さくにお話をするようになることも多々あります。が、「親しき仲にも礼儀あり」という言葉もあるくらいで、ビジネスマナーのような基礎の型が根底にあってその上でのお付き合いを心掛けたいものです。
当社には新卒入社者もそうですが、中途入社者で言えば前職で大手ISPでコールセンター業務をしていた者、他にも男性スタッフで趣味で茶道やお能を学んでいる者等、接客業や礼儀作法を体系的に経験した者も比較的多くおります。しかし、どの会社でもそうかと思いますが、だからと言って会社全体の電話の応対品質が高くなったり、礼儀作法がしっかりするということはありません。研修をおこなうだけでもダメで、今回おこなって頂いた研修に参加したスタッフ自らがインフルエンサーとなって率先垂範し、自分なりの言葉で後進のスタッフに熱く伝えてゆくことが重要であると思います。
ところで、マナーと聞いて思い出す本が、ベストセラーとなった『女性の品格』(cf.「読書の秋、ビジネス書・自己啓発本ハンティングのススメ ~圧縮された情報を解凍後、インストールさせるイメージで読み漁る~」)でしょうか。
その中に、「日本の伝統芸能ではまず型を習い、それを身に付けた上で自分の個性を花開かせます」という一節があります。これはスポーツでも職人の世界でも、物事を学ぶ上で本質であるように感じたものでした。これを言い換えた言葉に「守・破・離」というものがあるかと思います。この考え方については非常に難解なので、以下の記事を参考にされると良いと思います。
■cf.『守破離の思想』藤原稜三 松岡正剛の千夜千冊・遊蕩篇
http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya1252.html
私の好きな作家である松岡正剛氏が書かれた書評です。別件ですが、氏は以前「千夜千冊」という破天荒な企画を行いました。これは、「同じ著者の本は2冊以上取り上げない、同じジャンルは続けない、最新の書物も取り上げる」という独自に課したルールに基づいて、ほぼ毎日のごとく書評をアップしてゆくというもので、2004年7月の達成時、原宿クエストホールでおこなわれたイベント「松岡正剛千夜千冊達成記念ブックパーティー これでだめなら、日本は闇よ。」には私もひとり足を運んだものでした。日本文化の方法の伝承に注力されている氏の主宰する「イシス編集学校」では氏の唱える編集術が学べますが、そこでは「編集稽古」と銘打って各コースの冠にはそれぞれ「守・破・離」と設けています。
この「守・破・離」に基づいて言えば、ビジネスマナーは「守」の一部か、その前段階とも言えます。先に挙げた茶道やお能、武術やスポーツにおいても、プロフェショナルな人というのは「型」がしっかりしているから美しいし、結果も出しているかと思います。
社会に出た途端に結果をすぐに求められることが多いでしょうし、若い人の中には積極的で成長意欲が強かったり、転職してまもない人であれば期待にすぐに応えたいという側面も手伝って、ついついこの「守」がじれったくなって疎かにしてしまう人が多いかもしれません。しかしながら基礎を飛び越えて応用を身に付けようとしても、結局はその後の完成度や成長スピードに影響を与え、遠回りになってしまうことがあるのではないでしょうか。そういった視点で、ビジネスマナーはもちろんのこと、所属する組織で決まっているルールや置かれた立場を深く理解して、その上で本来求められている結果を出すことに今一度照準を合わせていきたいと感じました。
単にスキルを磨き、専門知識をもつ有能な職業人になることだけを目指さず、厳しい経済社会のなかで品格をもって生きていくにはどうすればよいか。単にお金や、出世のためだけでなく、人間として社会人として信頼されるように生きていくためにはどうすればよいか。(中略)しっかりとした識見をもち一目置かれるような社会人として生きていくためにはどうしたらよいか。この本でいろいろな角度から考えてみました。
/『女性の品格』(坂東眞理子著)
さて、最後となりますが、今年も残すところあと僅か。2009年を振り返ってみると、世の中的には、全体的に明るいニュースは少なかったかもしれませんが、私個人としては、今月で言えば今回挙げた研修などのような仕事以外の面でも、お取引先様とキャンプに行ったり、当社が加入する日本ウェブ協会主催の忘年会に参加したりなど、忙しい中でも充実した月となりました。
研修をおこなって頂いたKEE'S様、お客様も含めさせて頂いて、関わった全ての皆様に、今年一年いろいろとありがとうございました。来年度もどうぞ宜しくお願い申し上げます。
- 2009年12月 6日 22:30
- 小川 悟
- 個別ページ
誤解を恐れずに言えば、僕は今、世の中にあるほとんどの問題が、「コミュニケーション障害」からくるものだと思っています。
/『NHK 知る楽 仕事学のすすめ 人を動かすデザイン力』
12月に入りました。先週3日(木)、NHK「知る楽」では、アートディレクター佐藤可士和氏の特集が組まれていました。このコラムでも、ちょうど先月、ユニクロ、楽天と採り上げてきたタイミングですし、今回は両社をはじめ、数々のロゴデザインやブランディングをおこなってきた佐藤可士和氏の仕事の一端を見て、今の仕事に当てはめつつ感じたことを書きたいと思います。
はじめに、改めて自己紹介を兼ねて少しお話したいと思います。私は社会人1年目の頃、広告代理店に少しの間所属していたことがあるのですが、元々「広告」だとか「コピー」だとか、「販売促進」、「ブランディング」、「マーケティング」といった文字を書店で見かけたりすると、ついつい手に取ってしまうタイプの人間でした。
ですから、佐藤可士和氏に興味を抱く前は、佐藤雅彦氏に始まり、糸井重里氏、小林亜星氏、三木鶏郎氏とさかのぼって記載のある書籍を読んだことがありました。同時にエディトリアル・デザインにも興味があった時期で、雑誌「an・an」「BRUTUS」「POPEYE」の創刊当時、ロゴや紙面構成を手掛けられていた堀内誠一氏の『雑誌づくりの決定的瞬間 堀内誠一の仕事』などを愛読したり、「堀内誠一 雑誌と絵本の世界展」(99/08/21~99/10/03)という展覧会が平塚市美術館で開催された際は足を運んだりしたものでした。
私が社会に出てすぐの頃は、元電通の岡康道氏がTUGBOATという広告会社を立ち上げて独立し、「日本初のクリエイティブエージェンシー」と称されていました。私は「クリエイティブエージェンシーってなんだろう?かっこいい響きだな」くらいにしか思っていなかったのですが、その後、(後年『会社は誰のものか』を上梓される)吉田望氏との対談形式で書かれた『ブランド』という本が出たので読んだところますます興味を持ってしまい、既に別業界(インターネット業界)に転職していたにも関わらず、結局そのままタグボートの作品集『TUGBOAT 1999.07~2002.05』まで購入することになったものでした(笑)。
cf.広告戦略の成功は 企業の課題分析力に宿る ~TAGBOAT 代表 岡康道氏インタビュー(2006年4月20日,ソフトバンク ビジネス+IT)
http://www.sbbit.jp/article/212/
また、折しも当時の電通は汐留に新社屋を立てた頃で、ジャン・ヌーベルによる建築であったこともあって話題になっていたので見に行ったものでしたが、併せるように開館した企業ミュージアム「アド・ミュージアム東京」へはその後、何度か足を運びました。それから、昨年1月にはライティング課課長の松岡を誘って、宣伝会議コピーライター養成講座50周年を記念して行われた「コピージアム」という展覧会を見に東京ミッドタウンまで行ったものでしたが、そこでも「そうだ 京都、行こう。」とか「バザールでござーる」「きれいなおねえさんは、好きですか。」「愛だろ、愛っ。」「イチロ、ニッサン」「Yonda?」「私、脱いでもすごいんです。」「芸能人は歯が命」など展示されていたコピーを見ては、「うわー懐かしい!ちょうど就活期のだよ、暗記したよー、これ(笑)」などとテンションを上げながら巡ったことを記憶しています。
さて、閑話休題。佐藤可士和氏の話に戻しますが、ちょうど楽天が「楽天市場」などのロゴを今のロゴに刷新した際、私は元々、大手企業が企業のロゴやCIを変更するという背景には「大きな意味や決断がある」という先入観を持っていたので興味深く記事を読んだものでしたが、このときデザインに関わったのが佐藤可士和氏であると読んでいろいろなことが頭の中で結び付いたような気がしていました。
cf.
・楽天市場がロゴ一新(2005年6月2日,ITmediaニュース)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0506/02/news019.html
・故黒木靖夫氏と"クリエイティブ"に対する私の思い(2007年10月29日,Webコンサルティング表象文化論)
http://web-consultants.jp/blog/ogawa/2007/10/post.html
この前後の頃からメディアへの露出が増えたように感じていました。雑誌で言えば、私が好きだったシリーズなのですが、「BRURUS」の「大人の会社見学」、「TITLE」だと「こんな会社で働きたい!」シリーズ、「Pen」だと「1冊まるごと佐藤可士和。」のときは購入しましたし、テレビで言えば、NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』、テレビ東京『ソロモン流』で特集されたときも見たものでした。佐藤可士和氏の思考の本質は当時から一貫して変わらず、「アートディレクターは医師 デザインは処方せん」(cf.「コミュニケーション・ドクター」)というものです。
クライアントとの打ち合わせにおける「ヒアリング」を、医師の「問診」に例えて言われることもよくあります。「知る楽」では、『ユニクロ思考術』にも書かれてある柳井正氏とのエピソードが描写されていました。
当時のユニクロは、ブランドの輪郭がややあいまいになっていたように思います。一〇年ほど前にブレイクしたときは、リベラルなコンセプトを世の中に明快に打ち出していました。(中略)ところが、急成長していくとともに商品も店舗も膨れ上がり、いろいろな方向性を模索するようになりました。
/『佐藤可士和の超整理術』(佐藤可士和著)
特に現代のような、物や情報で溢れている社会では、企業がはっきりとした存在感や輪郭を伝えていくことが、非常に重要となっている。(中略)つまり、企業と社会のコミュニケーションが上手に取れていることが求められるわけですが、「言いたいことが伝わっていない」というのは、コミュニケーションが潤滑に流れていないということなんですね。
/『NHK 知る楽 仕事学のすすめ 人を動かすデザイン力』
私たちの仕事であるWebコンサルティングも、佐藤可士和氏の手掛ける対象規模や範囲とは違うものの、本質は似ています。付け加えて言いますと、私たちのお客様である中小・ベンチャー企業の場合は大手企業と比べると一層、「ビジョン」や「(社会や消費者に)伝えたいこと」が不明瞭であるケースが多いです。以前、このコラムで『コンサルタントの質問力』の一節を引用したことがありましたが、私たちで言うところの「ヒアリング」や「情報整理」の精度を向上させることで、そうしたものを明確にしていけないかと常々考えています。
お客様とのお打ち合わせにおいては、少しでもコミュニケーションを潤滑にして、本質を引き出し、本当に伝えたいことを把握し、社会との接点を探りながら、双方でデザインやコンテンツ、構成決めをおこなってゆく、「ビジョンを形にしていく」ような協働作業であると考えて取り組んでいます。伝言ゲームと同じで、ここでつまづけば、姿の見えない消費者に伝えることは難しくなってしまいます。
そして、本当に伝えたいことを把握するために心掛けている習慣が、「相手の立場に立って考える」ことでしょうか。佐藤可士和氏は先の著書の中で、「他人事を自分事にする」、「常に客観的な視点を持つ」、「思考を整理して言語化する」というようなことを言及されています。この考え方は私たちが推進するWebコンサルティングにおいても非常に重要な考え方であると感じたので、これからも意識して仕事に取り組んでいきたいと思いました。
僕はよく「デザインというのはビジョンを形にする作業だ」と言っています。クライアントが、「こうしたい、ああしたい」という思いを、見えたり、触れたり、実感できる形にすることがデザインなのです。
/『NHK 知る楽 仕事学のすすめ 人を動かすデザイン力』
- 2009年11月28日 23:36
- 小川 悟
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文明は変わっても、人間の中身は何も変わっていないということなのだろう。
江戸時代まで遡らなくても、ちょっと後ろを振り返るだけで、自分が現在越えようとしている壁を乗り越える方法の、少なくともヒントくらいはいくらでも見つかる。そういう目で見れば、歴史は人間の数限りない試行錯誤の保管所のようなものなのだ。
/『成功の法則92ヶ条』(三木谷浩史著)
今日は、会社の休みを利用して、楽天本社のある品川シーサイド楽天タワーで行われた「楽天Webディレクション&デザイン2009|教科書では教えてくれないウェブサイト作り」(RWDD2009)に行ってきました。まさに、先日発売された「週刊ダイヤモンド」では、「百貨店、コンビニを抜いた通販&ネット販売の魔力」として、「勝ち残るのはどこか? 楽天 VS アマゾン VS ヤフー」ネット通販3強比較などを特集していた時期だったので、ますます興味が高まっていたところでした。
同じCS本部の松谷と待ち合わせたのですが、現地で他のスタッフ数名にも出くわし、皆、自己啓発に勤しんでいるなと感じたものでした。今回のコラムでは、このイベントの感想と、そこで得た気付きを備忘録がてらまとめてみることにしたいと思います。松谷は昨日・一昨日に開催された「宣伝会議 プロモーション&メディアフォーラム2010」にも出向いているのと、今回のセミナーでも私とは別のプログラムを聴講しているので後々共有をもらおうと思っています。
このイベントは、今の楽天が創業後12年を経て、実際に「成功」までたどり着いた軌跡を実例をもって公開するという主旨のもので、お昼過ぎの13時からは楽天の取締役常務執行役員を務められる元スクウェア社長の鈴木尚氏を進行役として、代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏と、ドワンゴ取締役で楽天技術研究所フェローを兼任される夏野剛氏とのトークセッションで幕を開けました。楽天が「創業以来、初めて行う」と言うくらい、"競合他社"を含む不特定多数の企業・個人に向けたオープンなイベントにあって、幸い私はこの対談をかなり前列で拝聴することができました。
この場ではあまり詳しくは書けませんが、かつてNTTドコモで史上最年少執行役員になった「iモード」の立役者、夏野剛氏の軽快、かつユーモア(毒舌!?)溢れるトークに思わず吹き出すのを抑えきれず笑い声を漏らす聴講者も多くいらっしゃいました。
cf.iモード10周年、ビジョン達成に向けた不断の努力こそが市場開拓・顧客創出を実現する成長エンジン ~第8期末社員総会を終え、今期を総括する~
http://web-consultants.jp/blog/ogawa/2009/03/post-28.html
他にも、最近「Edy」の運用会社ビットワレットを買収し、いわゆる「楽天経済圏」を構成する47の事業の中から数名の現役社員の方が講演を行うプログラムと、少し前に募集のあったバナーのデザイン案とWebページの改善案を募集したアワードの表彰式、それから最後には13Fのカフェテリアで行われた懇親会と、盛りだくさんのイベントでした。
懇親会では楽天執行役員の方が気さくに話しかけてきてくれたり、偶然私たちがいたテーブルには、この業界にいれば誰もが知っている株式会社アイレップSEM研究所の渡辺隆広氏や辻正浩氏がいらっしゃってご挨拶させて頂いたり、はたまたパートナー企業の方とバッタリ出会ったり、懇親会後も寒空の下で様々な会社の方々とお話ができ、大変充実した一日を過ごすことができました。このような機会を与えて頂いた楽天の社員の皆様方に、この場を借りて御礼申し上げたいと思います。
せっかくですので、備忘録を兼ねて、私が聴講させて頂いたプログラムを列挙させて頂きたいと思います。
1. 14:05~ 【前】「楽天トラベル」つぶやきながら見えてきたTwitter活用3つのポイント、【後】楽天グループ、RIA表現への取り組み
2. 14:40~ 月間50億PV、社内ユーザー1,000人のアクセス解析で分かったこと
3. 15:20~ 楽天証券Webサイトフルリニューアル成功事例
4. 15:55~ 「楽天ブックス」ユーザー中心設計アプローチの実践と商品検索UIの改善
5. 16:45~ 楽天、動画メディアへの取り組み「動画共有とショッピング」
6. 17:20~ 常に改善、常に前進 変わり続ける楽天市場トップページ!
プログラムのタイトルだけ見返してみても、各プログラムの講演時間は短いながら、楽天の内部でタイムリーに行われている施策をオープンにしようと試みた講演だったかがご想像できるかと思います。
1つ目の講演では、昨今書店などでも関連書籍が並んでいる「Twitter」を用いた楽天トラベル運営スタッフの活用術の紹介。聴講している方々がタイムリーにその様子を「ツイート」(つぶやき)したりする場面も見られました。面白いなと感じたのは、iphoneユーザーの比率の高さ。街中では見られないくらいの所有率で、こうしたイベントに参加される方々の情報感度の高さに驚きました。私も同僚が使いこなしているのを見て、最近でこそ携帯電話からの新規ユーザー登録の対応を果たしたTwitterですが、UI(User Interface)やインタラクティブな操作性といった部分ではiphoneの方が勝っていると感じました。Twitter普及の背景には諸々有名なエピソードもありますが、iphoneのようなUX(ユーザーエクスペリエンス)を意識した、また、(もはや死語になりかけていますが)いつでもどこでも情報の受発信を可能とした「ユビキタス」なハード機器が与える影響も少なくないと感じました。まさに、これから年末年始商戦に突入する時期です。消費者を引き寄せる力を持った都市部などで、一体どれだけの企業や店舗がTwitterを活用した販売促進(タイムセール等)を手掛けるのか、個人的に楽しみだったりします。
他にも楽天が、今まで自社提供サイト(サービス)のアクセス解析を行うにあたり試行錯誤してきた――、市場に多く出回っているアクセス解析ツールの中から自社に必要なツールがどれであるのかを見極め全社導入まで至っているのかといった――エピソードが聞けたり、47という複数の事業を持つ楽天が(アクセス解析における)「標準化」と「情報共有」を課題としていたり、「サービスに応じたKPIを設定する必要性」を感じて動いてきた経緯があったり、今後目指すフェーズとして「解析の底上げ(事業やサービスによって解析パターンを作り、共有・教育する)」を検討していたりと、意外と身近な悩みがあったことが印象的でした。もちろん、当社と比べれば規模も精度も技術力も雲泥の差だとは思うのですが、講演を聴く前までは、全く想像もできない難解なプロセスをたどってきて今のような巨大な産業が形成されていたのかと思っていたので、ふとそのように思いました。このようにアクセス解析に力を入れている、あるいは別な角度から見て"力を入れざるを得ない"楽天の動きに気を配ることで、私たちのサービスもストレッチされる部分もあるのではないかと思いました。
その他、Webサイト改善の現場にあっては、サブテーマにもありましたが「教科書では教えてくれない」ことが多々あるようで、楽天側も、常に地道な「テスト」の繰り返しの結果が今の(最良の)状態であるというようなことをおっしゃっていました。
6.の講演で話されていましたが、現在「楽天市場」の契約企業数は約10万社、出品中の商品点数は約4600万点にのぼります。月次流通額は600億円、年間注文件数は8900万件という市場規模だそうです。講師の方がおっしゃっていましたが、この8900万という数字、平均して0.3秒に1回の注文がある件数となります。私たちではとても想像がつかない流通量ですが、現在のトップページは月間490万PVあるそうで、このトップページの改善を専属で担当するスタッフが5名もいらっしゃるとのことでした。
「え、トップページの改善担当だけで5人もいるの!?」と思った瞬間、すぐに説明がありました。小さな改善も含めて、地道な改善活動を続けた結果、13億円相当の改善ができたそうです。年間で13億円の付加価値を生み出せるのなら専属担当が5人くらいいても当然、というわけです。
冒頭で書いた、三木谷氏と夏野氏のトークセッションの中でも、三木谷氏は「特別なことは何もしてきていない」、ABテストなど地道にPDCAを繰り返しながら、改善のための努力をしてきただけとおっしゃっていました。裏を返せば、私たちなどであれば尚更のこと、こうしたプロセスをすっ飛ばして「いきなり成功」などとはいかないのだなと痛感させられました。
一通り講演を聴いた後で、先述した「RWDD2009 アワード」の表彰式を見ながら、表彰された方々に対して寄せられた選考理由を聴くときになってようやく、当イベントの大きな主旨というか意義のようなものに気が付いたような気がしました。そこには奇を衒った技術やセンスなどはありません、あるのは「楽天市場」創設当時からのコンセプトを受け継いだ精神で、加盟する店舗さんの売上をいかにしてあげるか?ということを意識して作られたバナーだったり、改善案を出された方が表彰されているのです。そういった意味で、このアワードがプログラムの中にしっかりと設けられていたことには、主催者側の意志の一貫性を読み取ることができたように思いました。
アワードの後は、例の懇親会でした。おいしいお酒と食事を、無料でこんなにして頂いてよいのだろうか――、と感じながらも、多くの方とお話させて頂き、スタートからラストまですっかり楽しませて頂きました(汗)。
最後になりますが、以前書いたコラムを幾つか、改めて再掲させて頂きたいと思います。
■クロニクル「インターネット業界10年史」 ~まるでビッグバンのように、超高圧な一点の意志からその広大無辺な市場は生まれた~
http://web-consultants.jp/blog/ogawa/2008/02/10.html
■ インターネットがもたらす第三の開国の夜明け前 ~2009年、横浜開港150周年~
http://web-consultants.jp/blog/ogawa/2008/07/post-12.html
■iモード10周年、ビジョン達成に向けた不断の努力こそが市場開拓・顧客創出を実現する成長エンジン ~第8期末社員総会を終え、今期を総括する~
http://web-consultants.jp/blog/ogawa/2009/03/post-28.html
10年と少し前までは、インターネットという"市場"は、まだ極小さな一点のわだかまり程度に過ぎなかったように思い返します。その何もなかった"土地"(WWW)に鍬を入れ、現在のように後発の企業が無数に参入してくるような大きな市場を開拓してくれた方々の中のお二人が、まさに冒頭で書いた三木谷氏と夏野氏であったのではないかと思います。そして、10数年を経た現在でも、現場は常に改善、ムダを省いて利益を生み出す不断の努力を続けられています。私企業ですから、一口にムダを省きたいといって「事業仕分け」をしてもらうわけにはいきません。場合によって外部のコンサルティングを導入することはあっても、すべて自社で解決していかなくてはならないのです。そして、今ではより大きな市場を目指して世界に目を向けられています。
根本的な問題はTWAが赤字を継続していることではなかった。困難な現状の事態にもかかわらず、航空会社は、適正に経営されれば利益をあげることもできる五億ドル相当の資産だった。
/『ハワード・ヒューズ』(ジョン・キーツ著)
そして二番目のコラムでとりあげた「第三の開国」――、つまりインターネットの日本上陸は、情報開国元年と呼ばれた1994年から15年の時を経て、ほぼ日本のどこにいてもインターネットで繋がってさえいれば、通信を介した「購買」という消費行為を行うことができるようになりました。
明日はまさに、前宣伝ばかりで期待を膨らませるだけ膨らませ、首を長くして待ちわびたNHKのスペシャルドラマ「坂の上の雲」が放映開始となりますね(iPhoneをビジネスにも活用する企業導入事例が増えてきていることから、「iPhone」=「クラウド・コンピューティング」!?の図式にかけてみたり)。
三木谷氏が「楽天市場」を、夏野氏が「iモード」を、まさに「坂の上の雲」をつかむようにして築き上げてきたある種の"近代"を、今度は私たちの世代がつかめるように努力してゆく必要があるのだなと思えました。
cf.「第6章 iPhoneが企業のクラウド化を加速する - iPhoneショック2」(2009年8月20日,ITpro)
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20090810/335418/
※「米国では中小企業の1割がiPhoneを採用!?」といった記事が読めます。
以前、「社員総会を終えて今期ゴールビジョンを共有する ~古典に学ぶ、現代社会を生き抜くための知識・見識・胆識~」のコラムで土方歳三を引き合いに出しましたが、今年から来年にかけても、「龍馬伝」など、多くのビジネスマンにとっては今まで以上に楽しみな大河モノのドラマが待ち受けていますね。折しも雑誌「プレジデント」の特集は、「心の雲が晴れる!司馬遼太郎と幕末・明治の人物学」 でした。
今回の「楽天Webディレクション&デザイン2009」も含め、過去に日本を切り開いてきた先人たちの思いや築き上げてきたものに触れることで、後続する私たちも大きな力を手にすることができるように感じることができた一日となりました。
この場をお借りして主催関係者の方々、及びお名刺を交換させて頂きました皆様方に改めて御礼申し上げるとともに、本コラムを締めくくりたいと思います。
- 2009年11月15日 13:59
- 小川 悟
- 個別ページ
ユニクロの急成長は、あくまで企業理念を実現しようとして、全社一丸となって精一杯努力した結果であり、ブームは会社側でコントロールできるものでもない。
/『一勝九敗』(柳井正著)
今年2009年は、「100年に1度の不況」と言われています。しかし、そうした時勢の中でも売れているものはあります。不況下においても売れているものの共通点を見出すことは難しいかもしれませんが、うまくいっている企業やサービスとうまくいっていないものを比較することで見えてくることもあるのではないかと考えます。
今年も11月に入り、毎年恒例の、雑誌『日経トレンディ』が選ぶ「2009年ヒット商品ベスト30」が発表される時期となりました。日経MJの「ヒット商品番付」は来月ですね。
ちなみに2007年度の「ヒット商品番付」で東の横綱に輝いた「ニンテンドーDS」&「Wii」 は鮮明に覚えています(cf.「ヒット商品番付」/SMBCコンサルティング)。翌年の新卒を迎え入れる際に行ったオリエンテーションで私は、新卒入社者の学生気分を楽しく抜いてもらおうと考え、身近な「ニンテンドーDS」&「Wii」をテーマにグループセッションを行ってもらいました。正式に各部門に配属となる前でしたが、以前のコラムでも触れた、「PEST分析」(「Politics(政治)」、「Economy(経済)」、「Society(社会)」、「Technology(技術)」)、それからマーケティングの4P(「Product(製品)」、「Price(価格)」、「Promotion(プロモーション)」、「Place(流通)」)といった側面から、「なぜ売れたと考えるか?」について自由連想方式で考察・発表してもらったのでした。正解があって行った企画ではなくて、「社会人って面白いかも!」と思ってもらうことと、学生までは「消費者の立場」で見ていたものが、社会人になると打って変わって「サプライヤーの立場」になることを体感してもらいたかったという「頭のスイッチを切り替える」ことが主旨のものでしたが、他チームの発表を共有して意見を述べたりと、一様に楽しんでもらえたようだったと記憶しています。
さて、そんな「2009年ヒット商品ベスト30」、今年の1位は「プリウス&インサイト」でした。民主党政権に変わり、マニフェストにも掲げられた「地球温暖化対策」や、エコカー減税・補助金による特需なども踏まえ、2009年という時代を感じさせる結果となりました。
今回のコラムでは「2009年ヒット商品ベスト30」でTOP10にランクインし、今週19日にテレビ東京系列「ルビコンの決断」で特集が組まれることとなったユニクロ、及びセカンドブランド、ジーユー(今年で創業60周年となった株式会社ファーストリテイリングの完全子会社GOVリテイリングのブランド)の「990円ジーンズ」に着目してみたいと思います。
ユニクロとしては昨シーズン、主力アイテム「ヒートテック」を2800万枚売り上げ、今シーズンは5000万枚を目指しているということで、まさに国民服の地位を得ていると言えるかもしれません。大企業の冬のボーナスが過去最大のマイナス幅である15.9%減と言われる中、そうした快進撃を進めるユニクロの年末商戦を控える前の動向を洞察してみるのも何か参考になるかもしれないと思い、書いてみたいと思います。
まずユニクロと聞くと思い出すのが、今から10年前の99年にオンエアされた、山崎まさよしさんを起用した秋冬のフリースのCMです。98年に東京・原宿に進出して一気にユニクロ・フリースブームが席巻しました。一昔前までこの手のファッションをリードしていたのはGAPだったように思いますが、現状ではユニクロがリードしている状況でしょうか。今や、少し前までは高級ブランド店の出店・改築ラッシュがあり、世界を代表するブランドストリートと呼ばれた原宿・表参道一帯には、ZARA(2002年4月)、H&M(2008年11月)、FOREVER 21(2009年4月)と、比較的に商品単価の安価な海外勢が立て続けに進出し、新たな要素が加わったような印象です。
また、渋谷でも2009年9月に元々ブックファースト渋谷文化村通り店があった場所にH&Mがオープンし、ユニクロも来春に道玄坂「ザ・プライム」への出店を検討中と聞きます。先月のベルサーチ日本事業撤退やヨウジヤマモトの民事再生法の適用申請と、かつて西武グループが進めた「セゾン文化」隆盛の時代、DCブランドブームの起こったバブル期を代表する名門ブランドと比べると対照的です。
そんなユニクロが98年の夏に全国紙に出した全面広告のキャッチコピーが、「ユニクロはなぜ、ジーンズを2900円で売ることができるのか」でした。それから10年を経て、ジーンズはついに3桁で販売されるようになりました。これはもちろん、単に利幅を減らして値下げしましたという話ではなく、品質は向上させながらコストダウンを図るというイノベーションの結果であることが様々なところで書かれています。ところが、ジーユーが990円ジーンズを発表した後の5月にはセブン&アイHDが980円で、その後立て続けに、8月にはイオンが880円で、9月にはダイエーも同額で、10月には西友が850円で、さらに同月ドン・キホーテは690円でジーンズ市場に参入。一見、ジーユー(ファーストリテイリング)がジーンズの価格破壊の引き金を引いたかのようにも見え、ジーンズ市場にコモディティ化が起こりかけているようにも思います。今後、ジーンズに1万円以上払って購入する価値観を消費者に与えるための「付加価値」を加えることに大きな障壁ができたようにも思います。まさに茨の道を選択したようにも感じました。
なぜなら、ユニクロ(ファーストリテイリング)はほぼカジュアルウェアに特化していますが、大手スーパーはカジュアルウェアがすべてではないにも関わらず、この価格競争に参戦したことにはおそらく大きな決断が陰にあると思われるからです。つまり今回取った選択によって、今後ずっと「良い物を安く」という品質基準を守り続けていかなくてはならないという縛りに拘束され続けることを覚悟したと思われるし、そうなると大手スーパーとしてはこの競争から離脱しないために、カジュアルウェアに対して、今をしのぐためだけの戦略でなく、過去・未来と一貫したこだわりを持ったマーケティングを今以上に強めていかなくてはならず、また、このように選択集中する商品対象が増えれば増えるほど、その維持向上のためにコストをかけ、組織を固める必要があると思うからです。
低価格という差別化戦略は不況の時期には消費者ウケが良いと思いますが、低価格ということは、いくら原価を下げたとしてもその分限界利益率の振り幅は小さくなり、より社会の動向や市場の変化に対して敏感にならなくてはならなくなることを意味してはいないでしょうか。ある程度利益率を保った価格設定をしておけば少しの失敗(原価高騰、売上げ鈍化等)は吸収できると思いますが、ギリギリのラインでやっていると少しでも経営や時代のニーズを読み間違えば一気に赤字に割り込んでしまいそうな印象があります。例えるなら高速で運転するF1ドライバーのようなイメージです。
以上のように、ジーユー(ファーストリテイリング)が口火を切ったジーンズの価格競争、この年末商戦を越えて各社はどのような結果に落ち着くのでしょうか。価格だけで見ればジーユーが一番不利のようですが、「価格」「品質」とほぼ並んだときにジーユーが一歩秀でているように見えるのが、ユニクロの「ブランドイメージ」でしょうか。ユニクロはプロモーションにおいても有名人を起用したり、「UNIQLOCK」で世界三大広告賞(One Show,クリオ賞,カンヌ国際広告祭)でそれぞれ受賞歴があったり、他にも障害者雇用やフリースの回収・リサイクル事業等、CSRの側面でも余念がないというか、大手スーパーのPB(プライベートブランド)と比べると、独立した衣料品店として確固とした理念を掲げて事業を推進しているように見えます。
ユニクロの経営理念に「いかなる企業の傘の中にも入らない自主独立の経営」というものがあるのが興味深いです。冒頭でご紹介した『一勝九敗』の中で、「当社は以前、紳士服店をやっていたが、取引をしていた紳士服メーカーのほとんどが商社に吸収されたり、廃業や倒産の憂き目にあった」と書かれています。また、柳井正氏のお父様がVANの商品が好きでVANショップを経営していたそうですが、「カジュアルウェアに親しむきっかけとなったことは確かだ」とも書かれていることからも、故石津謙介氏が経営されていた株式会社ヴァンヂャケットが1978年に負債総額500億円を抱えて倒産する直前、経営再建のために商社が介入し、それまで独自路線を突き進んできた「VAN」ブランドが市場に埋もれてしまったエピソードなどの過去の体験と何か関連がありそうですね。
最後になりますが、冒頭で『一勝九敗』を引き合いに出していますので、失敗のエピソードも書いておきたいと思います。
ファーストリテイリングがかつて、野菜の販売事業から撤退(子会社の野菜販売店「スキップ」)した経緯を持っているのは有名だと思います。他にも、スポーツカジュアル衣料品店の「スポクロ(スポーツ・クロージング・ウエアハウス)」、ファミリーカジュアル衣料品店の「ファミクロ(ファミリー・クロージング・ウエアハウス)」の撤退などあります。本書で柳井氏は、以下のように書いています。
世間一般には、僕は成功者と見られているようだが、自分では違うと思っている。本書でも触れたように、実は「一勝九敗」の人生なのだ。勝率で言うと一割しかない。(中略)もし、これでも成功と呼べるのなら、失敗を恐れず挑戦してきたから今の自分があるのだろう。
そして二十三条ある経営理念の第十三条には「積極的にチャレンジし、困難を、競争を回避しない経営」とあります。その他にも、この不況下で今一度力を振り絞って頑張らなくては!と思えるような理念が多く書かれています。今伸びている企業の経営理念に目を通してみるのも参考になるかもしれません。結びに変えて。
- 2009年10月28日 22:59
- 小川 悟
- 個別ページ
事実上、どんな場合でも、ウェブサイトは「セルフサービス」製品だ。あらかじめ読んでおく取扱説明書もないし、トレーニングセミナーもない。サイトでユーザーを案内してくれる顧客サービスもない。ユーザー自身が、勘と経験を頼りにサイトと直面するしかないのだ。
/『ウェブ戦略としての「ユーザーエクスペリエンス」 5つの段階で考えるユーザー中心デザイン』(Jasse James Garrett著,ソシオメディア株式会社訳)
最近肌寒い日などもあり、ようやく秋めいて?きたように思います。
秋は「芸術の秋」とも言われますが、毎年秋になると個人的に楽しみにしているイベントがあります。まず一つが「東京デザイナーズウィーク」です。公式サイトから抜粋しますと、「国内外から1,000を超える企業・学校・大使館・デザイナー・ショップなどが参加し、最新のデザインを紹介する、今年で24年目を迎えるインターナショナルなデザインイベント」ということで、メイン会場である明治神宮外苑とその周辺を巡るだけでも十分楽しめるイベントだと思います。普段は意識していないがために目に留まらなかった「デザイン」を発見したりということもあります。他にも、場所を六本木に移せば「DESIGNTIDE TOKYO」が開催されますし、神田・神保町なら今年で第50回を迎える「神田古本まつり」が開催されます。さらに今年・今月に限って言えば、(自分はまだ行けていないのですが)ビッグニュースなのが、千鳥ヶ淵から広尾に移転後リニューアルした日本画専門の「山種美術館」と、南青山と西麻布のちょうど間くらい、閑静な街並みの中でひっそりと建つ「根津美術館」の三年半越しのリニューアルオープンでしょう。後者の建築を手掛けたのは、現在のサントリー美術館を設計した隈研吾氏ということで、建物を見るだけでも楽しめそうです。私が以前訪れたのは、リニューアル直前の2005年10月頃でしたでしょうか、ちょうど尾形光琳作の国宝「燕子花図屏風」が公開されていたときでした。本作品は、いわゆる「琳派」の中では、俵屋宗達の「松島図屏風」と並ぶ有名作品です。この二つの美術館の開館によって、17世紀中期から後期にかけて、まだ三井家など企業体のパトロンが登場する以前の、江戸の職人・工芸文化が華やいだ時代の日本の芸術作品に触れることができる秋になりそうですね。
――と、秋到来に気分が高揚してのっけから自分の趣味の話題になってしまいましたが、もう少し続けさせて下さい。先の琳派を代表する二人の画家、俵屋宗達や尾形光琳の生きた時代――、その後、前代の桃山文化を継承し、寛永、元禄、化政と、文化芸術が華やいだ江戸文化が台頭する時代に突入していきますが、この時代にもやはり現代に名を残す著名人が現れました。その一人が松尾芭蕉です。
cf.財団法人 江東区地域振興会 芭蕉記念館
http://www.kcf.or.jp/basyo/
松尾芭蕉と言えば、紀行文の『奥の細道』が有名ですが、今年2009年は松尾芭蕉が弟子の曾良を連れて江戸を発ってから320年と言われています。少し前に発売された雑誌「一個人」の特集は『「奥の細道」を旅する』でしたが、私も今から5、6年ほど前に、夏季休暇を利用して当社専務と「奥の細道」の軌跡(の一部)を辿る旅行をしたことがありました。飯坂温泉駅前の芭蕉像の前で記念撮影したり、芭蕉も旅の疲れを癒したと言われる飯坂温泉周辺の「鯖湖湯」に立ち寄ったものの湯温が熱過ぎて入れなかったこと、松島の遊覧船でカモメが飛びながらエサを食べる器用さに驚いたこと、最上川を舟下りした際に船頭さんが話してくれた「おしん」の話、出羽三山の一つ羽黒山にあった三神合祭殿の造り(茅葺屋根の厚さや総漆塗りの内部)に圧巻されたこと、山寺(立石寺)で蝉の声に耳を澄ませたことなど、今でも新鮮に思い出されます――。
そんな芭蕉が言ったとされる有名な言葉・考え方に、「不易流行」(cf.「不易流行 - Yahoo!百科事典」)というものがあります。簡単に言えば、「不易」が時代を経てもその価値が変わらないもので、「流行」は時代と共に変わってゆくもののことを表現していますが、芭蕉はこれら二つは表裏一体のもので、統合されるものと考えていたそうです。これと一緒にしてはいけないのかもしれませんが、ふと、私たちが携わっているWebコンサルティングやWebマーケティング、Webデザインなどの世界においても言い当てていることがあるのではないかと感じたことを書いていきたいと思います。
ここでようやくタイトルにある「Webサイトにおける横幅サイズ最適解」の話になります。先に書いておきますと、結論として未来永劫これがベストだという横幅サイズはありません。なぜこのようなことを言うかと言いますと、まずは下の図をご覧下さい。
これは、当社が提供する、歯科医院の検索・予約ができるポータルサイト「歯科タウン」をモデルケースとして、実際に訪れたユーザーがどのくらいのサイズの表示域でブラウザを開いているかを調査したものとなります。当社クリエイターが試験的に行ったものなので、サンプル数は多くありません。左の数値は横幅サイズを降順で並べたもの(上位一部)で、右のグラフが一定の範囲ごとに集計した統計となります。
意外だったのが、多くのユーザーが予想以上に高解像度のブラウザで閲覧されていることでした。また、画面を最大化(中にはブックマークなどのサイドバーを表示)して見られている方が多いようです。ここで「解像度」と言うと語弊もあるので、今回のコラムでは「画面解像度」(cf.「画面解像度 - Wikipedia」)のことを指して言うことにします。閲覧したユーザーが使用しているディスプレイの解像度だけを調べたいのであれば、Google Analyticsなどのアクセス解析ツールにある「画面の解像度」を見れば分かります。今回は、実際利用されているディスプレイが表示している解像度の画面の中で、ユーザーが具体的にどのくらいの大きさにしてWebサイトを閲覧されているかを知りたかったと当社クリエイターが言っていました。クリエイターも自己満足でWebサイトを制作しているわけではないので、納品したお客様からだけでなく、実際にもっと多くのアクセスをされてくるお客様のお客様(エンドユーザー)からどのような見られ方をされているのかが気になるようです。
このアクセスのあったディスプレイの解像度、及び実際の表示サイズから想像される現在のトレンドは、およそ以下の順となりました。
1.1280×1024(SXGA,5:4)
2.1024×768(XGA,4:3)
3.1280×800(WXGA,16:10)
4.1680×1050(WSXGA+,16:10)
5.1440×900(WXGA+,16:10)
※6以降省略。左から、「ピクセル数」、「通称名」、「縦横比」となります。
通常Webサイト制作は、この「ピクセル」(cf.「ピクセル - Wikipedia」)(または%)を単位として構築されます。例えば、ディスプレイの表示を100%から変更しないで閲覧している前提で、1.の1280を例にすると、画面横幅いっぱいのサイズが1280ピクセルということになります。ですから、横幅400ピクセルはどのくらいの大きさになるかというと、画面の横幅の約3分の1くらいの大きさということになります。しかし、この大きさの画像を4.の1680サイズのディスプレイで閲覧すると、画面の横幅の4分の1よりも小さく見えます。
10月22日午前0時、先代の「Windows Vista」発売から2年9ヶ月、その前の「Windows XP」発売からちょうど8年を経て、新OS「Windows7」が発売されました。多機能・高機能化が進み、同時に大型ディスプレイの低価格化が進んだことで一般家庭まで普及し、文字通り「デスクトップ」画面はオフィスや家庭における「机上」と同意となり、様々なタスク(作業)を同じ平面上で行うことができるようになってきました。上記にある「16:10」は一般的なワイドディスプレイの規格ですが、この普及は家庭でパソコンを通じてテレビやDVDの閲覧をされる方が増えてきたことを示しているのかもしれません。ディスプレイサイズは、置き場所や使用者との距離の都合限界があると思いますが、近い将来、このくらいのサイズのディスプレイが今以上に普及してくるかもしれません。このくらいのサイズになると、画面の初期設定の横幅は最低でも1280くらいにはなっていると思います。
これらのトレンドの遷移とWebサイト制作がどう関係してくるのかと言いますと、ユーザーが実際に開いている解像度以上の横幅サイズでWebサイトを制作すると、横スクロール用のバーが表示されてしまうことになります。この横スクロールはWebサイトのユーザビリティを著しく損なうと以前から言われてきました。かと言って、小さめ小さめに構築(特に左寄せのレイアウト)すると、高解像度のディスプレイで表示した際に貧弱な印象を与えてしまいます。場合によっては「リキッドレイアウト」(ウィンドウの幅に合わせてレイアウトの最大幅が変わるように、ピクセルではなく%で設計する方法)で組んだ方が良いと言われることもあります。つまり、時代の流れに合わせて、ベストな横幅サイズは微妙に遷移していくのではないか?といった仮説を立てることができます。
この「Webサイトの横幅についての議論」は、今に始まったことではありません。ネット上でも多くの企業が試行錯誤していたり、Webデザイナーがブログで持論を展開していたりしています。例えば、私たちが「やはり、現状の社内の制作ガイドラインを疑い、そろそろ考えていくべきだ」と話題になったきっかけとなった以下の記事があります。
cf.So-net、トップページを4月1日よりリニューアル(japan.internet.com,2008年4月1日)
http://japan.internet.com/busnews/20080401/3.html
ここでは、「ユーザーの利用環境に合わせ画面サイズの横幅を拡張することで、情報を一覧で表示」と書いてあります。他にも、各社ポータルサイトなどで一斉にリニューアルが行われたのもこの時期でした。
cf.
・リニューアル続出!ポータルサイトに何が起きたのか?その異変に迫る(MarkeZine,2008年4月21日)
http://markezine.jp/article/detail/3340
・総務省報道資料 総務省ホームページのリニューアルについて(2008年4月21日)
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/2008/080421_2.html
こうした一連の記事に目を通すに、私たちが意識しなくてはならなかったことが、Webデザインおいても、「時代とともに変わるトレンド」、「ユーザーのニーズ」、「対象となるサイトの利用目的」など、マーケティングの観点から変えてゆく必要があるものがあることと、冒頭にも引用した『ウェブ戦略としての「ユーザーエクスペリエンス」 5つの段階で考えるユーザー中心デザイン』にもあるように、「常に利用者のことを意識して設計する」という不変的な考え方を持ってWeb制作に取り組む姿勢が必要だということです。
ブランドはサイトのデザインで作られるわけではなく、あくまで企業やそのサイトが顧客に約束した「価値」で作られる。ウェブサイトだからといって突飛なデザインにすることなく、企業として、サイトとして顧客にどんな価値を約束するのかといった上位の概念からデザインの方向性を検討する。
/『ユーザ中心ウェブサイト戦略 仮説検証アプローチによるユーザビリティサイエンスの実践』(株式会社ビービット,武井由紀子/遠藤直紀著)
最後に、冒頭の方でご紹介した「東京デザイナーズウィーク」の話をして終わりにしたいと思います。メイン会場では、企業もそうですが、美術系の学校や専門学校に在学中の方が自作の作品を展示されています。「これはどういう意図で創られたんですか?」と聞くと、ほとんどの方がその「制作意図、根拠」をしっかりと説明してくれます。これがWebサイト制作で言うところの「コンセプト」にあたります。専門課程でしっかり学ばれている学生さんの知識やわだかまりのない意思は、私も大変刺激を受けることがあります。
「情報デザイン」と言うと専門的な話になりやすいですが、大概デザインは情報を有しています。海外旅行に出掛けた際にたとえ外国語の知識がなくても、トイレで男女の区別がつかなくて困るというケースは少ないと思います。また、雨の日にお店の軒先に傘立てが置いてあれば、誰しもが迷うことなく傘を差しますよね?まさか店員さんに「これはなんですか?」と聞くことはないと思います。D.A.ノーマンの『誰のためのデザイン? 認知科学者のデザイン原論』になぞらえて言えば、「傘立ては傘を立てることをアフォードする」とでもなりますでしょうか(cf.「アフォーダンス - Wikipedia」)。
cf.情報検定:J検 情報デザイン試験/(財)専修学校教育振興会 検定試験センター
http://jken.sgec.or.jp/guide/jdesign.html
「情報デザイン」については、当社が加入している日本ウェブ協会の理事長を務められる森川眞行氏(cf.「森川眞行 - Wikipedia」)が専門ですので、専門外の私がご説明差し上げるのも誤った解釈があっては良くないのでこの辺にさせて頂きたいと思いますが(汗)。
以上、私が見るCS本部は、改めてのご説明となりますが、Webサイトの設計を行うWebマーケティング部と、実際に構築を行う制作部とに分かれます。分業することで専門性を高める機能別組織(「ファンクショナル組織」/F.W.テイラー)となっていますが、今以上に品質を高めていく必要があるため、双方の組織にはもっと横串を通すべきだと考えています。もちろん今でも意識の側面では連携はうまく取れていますが、知識や技術といった実務的側面ではまだ課題が残ります。
こうしたギャップを埋めるため、現在、日本ウェブ協会主催の勉強会、『「ウェブ開発プロセス」への理解』へ部員が何名かお世話になっています。今後もこうした仮説検証と学習、実践によって個々人の能力を高め、お客様へより高付加価値のサービスが提供できるよう努力していきたいと思います。
- 2009年10月12日 15:24
- 小川 悟
- 個別ページ
君の仲間の学生のなかには、教師や教育制度について不平を鳴らすことに忙しく、肝心の勉強に手がまわらない者が多い。制度は私の学生時代以来三十年間変わっていないし、おそらく今後の三十年間にも大きな変化はないだろう。(ほとんどの教育者も変わらない)。だから制度に不満を言うよりも、制度を巧みにだし抜いてやるといい!
/『ビジネスマンの父より息子への30通の手紙』(キングスレイ・ウォード著)
私たちが仕事を進める中で、「USP(Unique Selling Proposition)」という言葉を頻繁に使用します。コンサルティング業界はとかく横文字を多く使うと揶揄されることが多いですが、Webコンサルティングを推進する当社でもどうしてもこの言葉だけは多用してしまいます。できればこれを機会に、このコラムをご覧になられる経営者、Web担当者の方々とは共通の認識を持ち合えれば幸いです。
英単語の並びからも想像されるとおり、「独自の売り」「独自の強み」という意味で使用しておりますが、企業のWebサイト(ビジネスサイト)を構築する上で、市場の中で自社をいかに差別化して露出してゆくかが顧客の創出に関わるという考え方ですね。私たちは新規・既存問わず、お客様へのご提案の際にはまずこの「USP」に着目します。お客様の中には「そんな独自の売りなんてない」とおっしゃられる方もいらっしゃいますが、ヒアリングを進めてゆく中で他社ではなかなか真似のできない強みを持っていたりといったことも少なくありません。
cf.
・USPの重要性(2008年6月27日,木村 裕紀)
http://web-consultants.jp/blog/kimura/2008/06/usp.html
・USPが見つからない(2009年8月29日,並木遼太郎)
http://web-consultants.jp/blog/namiki/2009/08/usp.html
企業で言えばマクロ環境分析、STPマーケティングといった小難しいマーケティング手法でUSPを洗い出してゆくのがセオリーなのでしょうが、そうした体系化されたノウハウがなくても、まずは以前このコラムでも引用した『コンサルタントの質問力』で言及されているようなヒアリングのプロセスの中で、自社の強みの発見に至れれば良いのではないかと私は考えております。
今回のコラムではそうした独自の強み――、「USP」をどうやって見つけるか、また創り出してゆくのかということについて、企業を縮図化して「個人」にスポットを当てて考察してみたいと思います(cf.「自分戦略」)。
ミドル、学生、節目をくぐる個人が、自問することになる相互に関連する問いがある。それは、さらっと答えるにはやさしく、真剣に考えるとけっこう難しい問いだ(中略)。エドガー・シャイン(Edgar H. Schein)は、つぎの三つの問いについて内省することが、キャリアについて考える基盤を提供するという。
1. 自分はなにが得意か。
2. 自分はいったいなにをやりたいのか。
3. どのようなことをやっている自分なら、意味を感じ、社会に役立っていると実感できるのか。
(中略)先の個人レベルのシャインの問いを、組織レベルに翻案してみよう。
1. わが社が他のどこよりもうまくできることはなにか。
2. わが社は、どこでどのような事業を営みたいのか。
3. その背後にある事業観や理念、そこで事業することの社会的な意味や価値はどこにあるのか。
/『働くひとのためのキャリア・デザイン』(金井壽宏著)
※上記書籍の中では三つの問いについてそれぞれ、「能力・才能について」「動機・欲求について」「意味・価値について」という自己イメージを照射していると説いています。
先日10月3日の土曜日には、第二四半期末の社員総会がありました(前回の様子はこちらの記事をご参照下さい)。例の如く、第一部は各部門長が期初に掲げた部門方針の進捗について発表をしますが、第二四半期末という時期は当たり前ですが今期折り返し地点である上半期末にも当たるため、進捗については自身でも発表しながら妙にリアリティを感じます。当社で節目にあたる時期に行われる社員総会ですが、多くの賞が設けられており、一生懸命仕事をして成果を上げているのに普段は目立たちにくいスタッフが主役となれるチャンスがあって表彰時はいつも盛り上がります。
■渋谷の某クラブを貸し切った社員総会、東京本社以外からも大阪・名古屋・福岡と、各拠点から全社員が一堂に会する日
さて、そんな社員総会、今年もちょうど新卒の
内定式の時期にも重なり、当社でも10年卒の新卒者の内定式を兼ねました。日本経済新聞社が主要企業を対象に実施した調査によれば、10年卒の内定者数が、一般的に各社採用の落ち込んだ
今春の入社者を34%も下回るということでしたが、当社でも今春に比べ少ない入社者数でした。
cf.
・2008年度・新卒者採用に関するアンケート調査結果の概要 (2009年4月10日,日本経団連)
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2009/034.html
・2009年度新入社員の会社生活|調査報告書(学校法人産業能率大学)
http://www.sanno.ac.jp/research/fresh2009.html
10年卒の新卒者は大学時に浪人や留年、休学等がない場合は1987年生まれかと思うのですが、企業の人事的側面から言うと、この年代に生まれた人を「ゆとり第一世代」と呼んでいます。小学校から高校卒業まで「ゆとり教育」を受けた世代ですね。この「ゆとり教育」という言葉を聞くと、どうしてもネガティブなイメージを持ってしまいませんか?
個人的に思うのは、制度そのものの是非よりもネーミング自体が気になったものでした。いわゆる「総合学習(総合的な学習の時間)」を導入したことが特徴的な制度でしたが、テレビやネットなどメディアを介して伝えられるイメージによりネガティビティ・バイアス(cf.『社会心理学』/亀田達也・村田光二著)がかかり、誤った教育法である印象を受けました。
むしろ、私の世代の教育手法も一般的には「内容知中心」と言われ、「受験戦争」という言葉が示すとおり暗記主導の授業が多く、授業によって自身で考える力が身に付いたかと言えば懐疑的でした。経験主導の「方法知中心」の教育方針であれば、社会に出てからこんなにも焦っていろいろ学ばなくても基礎的な力が備わっていたのではないか?とか、もしも当時、今のように体系化されたフレームワークに沿った自己理解や問題解決のプロセスを学べる授業があれば、もっと就職活動時に主体的な自分を押し出せたのではないか?と、過去の教育体制のせいにしたくなるときもあります。
例えば、算数嫌いになる最初のきっかけではないかと個人的に思っていた「三角関数」。Web業界を例に出して言えば、Flashアニメーションなどを制作するクリエイターであれば基本的な知識かもしれませんが、波形などの動きを表現するのに、例の「サイン」「コサイン」の値を計算して入力することがありますよね。当時、目的もよく分からないままに、ただ「公式(内容)」だけを覚えさせられましたが、仮に「将来Webクリエイターを目指している人は特に必見!」などと言って、実際にパソコンの画面でFlashアニメーションを用いたWebサイトなどを見せながら、値を変える度に波形が変わる「方法」を説明されたら、もしかしたら興味を持って授業に取り組めたかも!?
――と余談はさておき、コラム冒頭でカナダの実業家であるキングスレイ・ウォードが二度の心臓の大手術を受けたことで、生きている内に自分の経験から学んだ人生の知恵やビジネスのノウハウを息子に伝えようと書いた30通の手紙をまとめた『ビジネスマンの父より息子への30通の手紙』を引き合いに出しましたが、本書が日本で刊行されたのが1987年、ちょうど「ゆとり第一世代」が生まれたときのことです。教育制度は今後30年間大きくは変わることはないと書いていますが、わが国日本ではその後大きく揺れ動くこととなりました。しかし、本質を見失わないという意味では、普遍的なことを言われていると思います。
私たちの仕事の中で、大きなところで言えば新たに部課、チームが創設されるとき、新商品導入時、新規プロジェクト、部内の教育制度まで含め、この「ネーミング」は強く意識しています。「名は体を表す」とも言いますが、言語学でも記号学でも認知学でも、物や状態、感情を示す際に「言葉」を必要としますが、それらと「意味」とは三位一体の関係であるので、つまり言葉は意図を正確に表し、伝えるためのものでなくてはならないというのが私の持論です。会議の目的や各種プロジェクト、チームの名前等、そこを適当に行うと結果が変わってきてしまうことがあります。
余談になりますが、例えば、社内で「顧客満足」を推進するためのプロジェクト体制を敷くことになったケースを想定してみて下さい。極端な例かもしれませんが、以下の例を見て下さい。
1、「クレームを減らす体制づくりプロジェクト」
この名前のプロジェクトで、果たして「顧客満足」を推進できるでしょうか?とてもできそうな感じがしないですよね?これは、顧客不満の要因の一つにスポットを当て過ぎてしまっています。いわゆる「木を見て森を見ず」的状態になってしまいます。
2、「仕事に関わる人すべてをハッピーにする体制づくりプロジェクト」
こちらの場合は、大変夢のあるプロジェクト名ですが、想定される成果はかなり規模が大きく、理念やスローガンに近い「顧客満足」の域を超えた広過ぎるものですよね。参画したスタッフそれぞれの価値観に依存するため方向性がぶれやすく、先の目的を遂行する上では結局は結論が出にくい印象があります。
では、以下の2つを比べた場合はどうでしょうか?
3、「お客様を満足させる体制づくりプロジェクト」
4、「お客様が満足する体制づくりプロジェクト」
一見して同じような意味ではないかといったイメージを持ちそうになりますが、何か印象が異なりませんか?そうですね、「主語」が違います。文字数で言えばたった1文字、"てにをは"が変わるだけで、目的や求められる成果、議論やタスクの洗い出しなど、その後の関わるスタッフの意識や行動パターンが変わってくることもあるのです。
そういった観点で見てゆくと、「ゆとり教育」という「内容(対象)」を示す「言語」で想起する「意味」は、意図や実態がそうでなくても、どうしてもネガティブなイメージになってしまうというわけです。文明の発展に伴って、より高次の教育と人財が求められ、手段がイノベートされてゆくことは悪いことではありません。しかし、異なる教育方針下で育った人同士が互いに尊重し合わず、優劣を決めるための材料とするだけである状態は建設的ではありません。私たちはそういった心理状態に陥らずに、もっと民度を高く持っていたいと考えますが、「ゆとり教育」という言語情報の伝達過程におけるコンテクストのズレ、1対複数のコミュニケーション(マスコミュニケーション)の恐ろしいところであるとも感じました。
cf.「ゆとり」という表現 ネットでは他人けなす言葉(J-CASTニュース,2007年9月11日)
http://www.j-cast.com/2007/09/11011193.html
ところで、この「ネガティビティ・バイアス」ですが、私たちの身近なところでもよく起こり得るものだと思います。顕著なのが、昨今の出版物だと思います。時代を反映してか、ネガティブ・イメージで語尾を締めるタイトルの新書が多くあります。「~できないのか?」「~できない理由」「~ダメにする」、挙げれば枚挙に暇がありません。出版は、その他テレビや新聞などと同じように多くの大衆にリーチするメディア、流通であると言えます。 まるでコンプレックス商材を扱うように、フィア・アピールするかのようなタイトルの書籍が目立ちます。一般的なビジネスシーンにおける、例えば会議での議論や、プロジェクト進行、マネジメントなどの状況下で好循環を生むと言われる手法――、ダメである原因を列挙するのではなく、「どうすればできるようになるのか?」について考えたり、否定的な言葉を肯定的な表現に言い換えて発するようにする行為とは対極にある発想だと思います。そうした書籍の多くは、著者か編集者の意向で逆説表現にした方が売れるといった発想で、他社が成功すれば右へならえでタイトルを決められているのかと思いますが、こうした書籍が氾濫する社会を目の当たりにする読者のことを考えて決められているのかは甚だ疑問に感じています。いくら内容が逆説的に書かれていても、こうした「言葉」が想起させる「意味」にはどうしてもネガティビティ・バイアスがかかって、「だから自分はダメなのか」といったネガティブな自己解釈を促してしまうように思います。同じように、ネット上の掲示板やコミュニティなどでも、ネガティブな意味を示す問いに対する回答欄は、ときに第三者同士でさえも荒れる傾向があるように感じています。
人間の弱点を表すことばは豊富にあり、細かい点まで指摘できる。(中略)それに対して、強みを表すことばは実に乏しい。
/『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう あなたの5つの強みを見出し、活かす』(マーカス・バッキンガム&ドナルド・O・クリフトン著)
強みや長所を伸ばす、褒めるといったマネジメントの基本要素も、ポジティブな情報のインプットの土壌があるから育まれるように思いますし、上記のように「ダメな理由」ばかりをレパートリーに増やして「弱点」に対する批判ばかりを学んでも解決思考は育たず、むしろ批評家を生むだけではないかと思いました。そして、この「強みや長所を伸ばす」といった発想こそが、先の「USP」を発見するのに必要な基本的発想でないのかと考えています。
cf.自分の「気がついていない強み」を知る方法(2009年10月2日,日経ビジネス Associe)
http://www.nikkeibp.co.jp/article/nba/20090930/185235/
以前のコラムで、私の就職活動期について触れたことがありましたが、歴史の浅いIT業界やベンチャー企業が急成長を遂げた一因として、「既成の枠にとらわれることなく良い点、強みだけを伸ばすことに注力できたこと」を挙げてみたのですが、来春迎える予定の「ゆとり第一世代」に対しても、同じようにアプローチできないかと考えています。もちろんこうしたポジティブ・シンキングだけではリスク回避ができなかったり、疲弊感を感じてしまったり、プレッシャーに押し潰されてしまう人もいると思うので使い分けも重要かと思いますが。
会社を経営されている方は、普段から自身の強みを把握してそれを仕事に活かしておられる方が多いので、先にも述べましたが、私たちがWebコンサルタントとしてヒアリングを重ねる中で、社長ご自身が潜在的に考えておられる「自社の強み」を是非私たちと一緒に言語化して、自社のWebサイトに掲げていきましょう。
- 2009年9月23日 10:59
- 小川 悟
- 個別ページ
その程度の本だと気づいたら、ただちにその本を投げ捨てなさい。時間ほど貴重なものはないからである。
/『読書について』(ショーペンハウエル著)
今日でシルバーウィークも最終日となりました。皆様いかがお過ごしでしたでしょうか。もちろんサービス業に従事される方などは、「みんなが遊んでるときが書き入れ時だ!」という方がほとんどかと思います。最終日前日の昨日も、テレビでは帰省のUターンや行楽の帰りなどで大渋滞した高速道路を映しては、「1000円高速」の影響を説明していました。
そして連休の終わりとともに、23日は秋分の日ということで、これから日が短くなっていきますね。皆さんは、秋と言えば何を連想しますか?昔からよく言われている言葉で、「読書の秋」、「芸術の秋」、「スポーツの秋」、「食欲の秋」、「収穫の秋」などいろいろ修飾されて言われていますが、今回はこの中から「読書の秋」に着目してみたいと思います。昨今改めてブームとなっているビジネス書や自己啓発本に対して、学生時代までは文学小説かエッセイしか読まなかった私のビジネス書に関する考え方をお伝えしたいと思います。
私が普段書いているこのコラムでは、今回も例に漏れずではありますが、一話ごとに最低一冊、自分がかつて読んだ本から一部引用してご紹介しています。いわゆる会社から持ち回りで任されるビジネスブログの類とは差別化させて、「Webコンサルタント」のコラムとして何か特徴を持たせられないものかと思って始めたことが動機ですが、常に読書をしていないといつかネタが切れるという強迫観念に襲われることにならないだろうか!?と気が付いたのは、つい最近のことであったりします(汗)。
――とは言っても、私がそれほど心配していないのは、2004年刊行の『バカの壁』(養老孟司著)以降か、2005年に『国家の品格』(藤原正彦著)、2006年には『Web進化論』(梅田望夫著)、2007年は『女性の品格』(坂東眞理子著)、2008年は『悩む力』(姜尚中著)、2009年だと『断る力』(勝間和代著)などでしょうか、読者層はビジネスマンを越えて拡がり、もう数年続いている「新書ブーム」、またはここ数年来続いているビジネス書・ハウツー本・自己啓発本のブームがあるからです。
中には、これら多くの本から自分に合った本をどのように選び、どのように読み、どのように実践に活かすかといった指南書のようなものまでが売れているようですが、これほど元ネタが多いのであれば、しばらくネタに尽きる心配もないな、と楽観的に考えていたりします。
それでは以降、多くの書名を引き合いに出していきますので、実際にビジネス書が多数並んでいる書店を想像してみて下さい。
昨今、『「1秒!」で財務諸表を読む方法』の著者である小宮一慶氏は、「ビジネスマンのための養成講座」シリーズで、「発見力」、「数字力」、「解決力」に続いて「読書力」――『ビジネスマンのための「読書力」養成講座 小宮流頭をよくする読書法』を書かれ、他にも『情報は1冊のノートにまとめなさい』、『読書は1冊のノートにまとめなさい』の著者である奥野宣之氏は『だから、新書を読みなさい』という書籍を出されています。
それにしても、巷ではこれほど「活字離れ」、「読書離れ」と言われているのに、この新刊点数の多さは何を示しているのでしょうか。昨今の出版不況において常に新刊書籍を発行し続けていないと経営が苦しくなるという業界特有の構造(cf.9月7日、ゴマブックス株式会社、民事再生法の適用申請)か、大不況やリーマン・ショックなどの影響で就職難や派遣切りに発展した風潮の中で、自ら(または自社)に直面する問題として危機感を持って捉える方が増えられたのか、出版流通については素人ですので私は詳しくは分かりませんが、「もう人任せではいられない!」という社会心理的要因に端を発する現象でしょうか。いずれにせよ複合的な要因が絡んでいそうですね。
さらに、このブームを煽っている要素の中に、「インフルエンサー(影響力を及ぼす人)」の存在があると思っています。ここ数年のビジネス書・自己啓発本関連で、そうした「インフルエンサー」にあたる人と言えば、神田昌典氏、本田直之氏、勝間和代氏といった面々を連想します。なかでも「読者への影響」といった点では、直近でメディア露出の多い、勝間和代氏について特筆したいと思います。
勝間和代氏の輝かしいキャリアについては割愛しますが、2007年以降上梓された数多くの著書の中に、『読書進化論 人はウェブで変わるのか。本はウェブに負けたのか』(勝間和代著)というものがあります。その中で「本を読むことは著者の体験を、読者が疑似体験すること」と書いています。基本的には「読み手」より成功している「書き手」が、成功までの辛く長い道のりを、あれだけの文章量にまとめているのですから、それを手軽に手中に収められる感覚は非常にメリットを感じます。また、本田直之氏は、『レバレッジ・リーディング』において読書は「投資」であると表現されていますが、自伝やビジネスのサクセスストーリー系の本であれば確かにこれも言い得て妙であると思いました。ビジネス書を読むときのスタンスというか、読み方にもいろいろあるのだなと、このように体系化して考える方々の著作を読んで私も参考にしようと思いました。
他にもフォトリーディングが良いとか、ひろい読みでも十分知識を得ることができる、多読するべきだと、いろいろ言われています。先の『読書進化論 人はウェブで変わるのか。本はウェブに負けたのか』の中でも紹介されている『本を読む本』(M.J. アドラー/C.V. ドーレン著)では「積極的読書」を勧めていますし、『知的生産の技術』(梅棹忠夫著)では、「はじめからおわりまでよむ」のが良いと説かれています。
要は「本の読み方」というのは、読者によって、また対象となる本や読む目的によっても変わってくるということでしょう。往年の名作小説を、まさかあらすじだけ読んで満足だという人はいないでしょう。批評家が作品をひろい読みして、この本はここが良いとか悪いとか言及するのはちょっと難しいと思います。ビジネス書についても同じで、スタンスを養いたいときにスキル重視のハウツー本を読んでも身に付きませんし、その逆も然りです。
先の、成功者の代名詞的存在である勝間和代氏の一連の考え方に対しても、「<勝間和代>を目指さない。」と相対峙する考え方を展開される方もいます(cf.『しがみつかない生き方―「ふつうの幸せ」を手に入れる10のルール』/香山リカ著)。両者の考え方を知れば、確かに双方の考え方があるなと、例のアサーティブな発想が頭に浮かんできます。ただ唯一確かなこととしては、以下の書評を書かれている方が記事のタイトルにもされていますが、本に対して自身の問題を解決してもらおうとしていてはダメだということですね。同じ努力をしても同じ生き方ができるという保障はないわけですし。
cf.勝間和代も香山リカも、助けちゃくれない? 『しがみつかない生き方』 香山 リカ著(評:朝山 実)|日経ビジネスオンライン
http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20090917/205019/
そう考えてゆくと、読書というのは結局、読んで何かを得るのも挫折を味わうのもすべては読み手の体験であって、読む本によって同じ効果が等しく万人に行き渡ることはないということなのかもしれません。
最近、書店では「読書の秋」に因んで、平台に置く本や雑誌の種類で特色を打ち出されています。私の場合は、ビジネス街、とりわけ、IT関連企業や広告代理店の集積地には、そうした読者層に向けて書店側でセレクトした関連書籍や雑誌が多く並んでいるので、近所の書店に行かずにわざわざそうした書店まで赴くこともあります。
私はこのような業界にもいますし、購入予定の「書籍名」が分かっている場合などは、Amazonのようなネットサービスは便利なのでよく利用します。ですが、それでもリアルタイムなトレンドや温度感、分類や特集(書棚の編集方針等)、店員さんの書くPOPなどの切り口から見つけ当てることができる本との邂逅に期待して、実際に書店に赴いてしまうのです。
cf.【なぜ本は売れないのか】(上・中・下)着いたその日に返本(MSN産経ニュース,2009年9月20日)
http://sankei.jp.msn.com/culture/books/090920/bks0909200759000-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/culture/books/090922/bks0909220917001-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/culture/books/090922/bks0909220925002-n1.htm
ただ、上記の記事を見る限りでは、新書をはじめとした新刊本の点数は日次で約200点以上が刊行されているそうです。この中から自分に合った本を探し出すのは至難の業と言えるでしょう。もはや新刊点数でさえ、インターネットの情報量に負けず劣らず玉石混交に大量に並んでいますし、書店に行った際には偶然在庫がなく比較できない状況である中から選んでしまうかもしれません。「他者のレビューを頼りに……」等、本選びの段階からつまづく要素があって、自分に合った本探しも楽ではありません。
雑誌で言えば、「THE 21(2009年10月号)」で、「一流の読書術 VS. 二流の読書術 仕事ができる人の「本の賢い選び方&読み方&活かし方」」といった特集が組まれたりしています。「週刊ダイヤモンド 2009年9月26日号」の第二特集では、「秋の夜長は「じっくり読書」 "ビジネス・人生に役立つ本"ベスト100」が組まれ、知識人推薦の図書が紹介されています。その中で松岡正剛氏のコメントがあったのですが、「自分が尊敬する上司や友人など身近な人の薦めや、好きな著者や偉人や芸術家などが読んだ本を読んでみたらどうですか」と書いておられました。
これは一理あると思いました。ビジネス書や自己啓発本を購入するビジネスパーソンの心理を想像しますと、「知りたい」「解決したい」といった知的欲求や、「ああいう人のような生き方をしたい」「こんな行動を取ってみたい」といった社会的欲求等から手に取ろうとすると思いますので、そもそも推薦者が信頼されている必要はあるものの「ハロー効果」(cf.「ハロー効果 - Wikipedia)も手伝って、すんなりと受け入れられるような気がしました。
それから、読んだ本の知識を何かのシーンで活用したいと考えるビジネスパーソンの方も多いと思います。勝間和代氏なども勧めておられますが、せっかくインターネット全盛の時代なのですから、こうしたコラムやビジネスブログを立ち上げて、世の中に自身の考え方や文章を公開、つまりアウトプットを続けるのもアンダーラインを引きながら読むのと同様に読書の理解を助けるでしょうし、そこからさらに深く思索を進めることで過去に理解できなかった作品を再読できるようになったり、より自分に見合った難易度の書籍の発見へと繋がっていくものと思います。
当社でも最近、数名の部下から、「この前、○○部長(または、○○課長)から薦められていた本、読みましたよ」と声を掛けられることが増えてきました。部内の管理職が仕切りに読書を勧めていたり、毎月の部下との面談時に読書やセミナーで学んだことを自身の考え方に交えて話していたりするからだとは思います。これも普段から部下から信頼・尊敬されている上司が勧めないとなかなか浸透はしないのですが、上司側としてはそうした制約なども自己成長の励みになっているようです。
これ以上書くと収拾が付かなくなってきそうですのでまとめに入りますと、本コラムの副題にも書かせて頂いたのですが、著者の人生観やノウハウの集大成等、あれだけ膨大な情報量を書籍というコンパクトな形式に圧縮し、読者の手元にまで流通できているものを活用しない手はないと思います。あとは読者が目的を明確にした上で、その達成を助けてくれる書籍を見定めて購入し、自身の中へ解凍・インストールすることで、配布側(著者)のレパートリーを少なくとも方法論の一つとしては持てるようになるわけです。
規定のソフト以外は何もバンドルされていない購入当初のパソコンに既製のソフトをインストールすると、途端にそのパソコンが機能的になり、使える幅が広がり、高付加価値を持ち始めるようなイメージでしょうか。自身の中のレパートリーに手詰まり感を感じたら、是非一度、ビジネス書を手に取ってみると良いかもしれません。それで道が開けることもある筈です。「読書の秋」、近くの書店で、Amazonで、ビジネス書の狩猟などはいかがでしょうか。