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Webサイトにおける横幅サイズ最適解を求めるための試論 ~不易流行の情報デザインに触れる秋のデザイン週間~

事実上、どんな場合でも、ウェブサイトは「セルフサービス」製品だ。あらかじめ読んでおく取扱説明書もないし、トレーニングセミナーもない。サイトでユーザーを案内してくれる顧客サービスもない。ユーザー自身が、勘と経験を頼りにサイトと直面するしかないのだ。

/『ウェブ戦略としての「ユーザーエクスペリエンス」 5つの段階で考えるユーザー中心デザイン』(Jasse James Garrett著,ソシオメディア株式会社訳)

 最近肌寒い日などもあり、ようやく秋めいて?きたように思います。

 秋は「芸術の秋」とも言われますが、毎年秋になると個人的に楽しみにしているイベントがあります。まず一つが「東京デザイナーズウィーク」です。公式サイトから抜粋しますと、「国内外から1,000を超える企業・学校・大使館・デザイナー・ショップなどが参加し、最新のデザインを紹介する、今年で24年目を迎えるインターナショナルなデザインイベント」ということで、メイン会場である明治神宮外苑とその周辺を巡るだけでも十分楽しめるイベントだと思います。普段は意識していないがために目に留まらなかった「デザイン」を発見したりということもあります。他にも、場所を六本木に移せば「DESIGNTIDE TOKYO」が開催されますし、神田・神保町なら今年で第50回を迎える「神田古本まつり」が開催されます。さらに今年・今月に限って言えば、(自分はまだ行けていないのですが)ビッグニュースなのが、千鳥ヶ淵から広尾に移転後リニューアルした日本画専門の「山種美術館」と、南青山と西麻布のちょうど間くらい、閑静な街並みの中でひっそりと建つ「根津美術館」の三年半越しのリニューアルオープンでしょう。後者の建築を手掛けたのは、現在のサントリー美術館を設計した隈研吾氏ということで、建物を見るだけでも楽しめそうです。私が以前訪れたのは、リニューアル直前の2005年10月頃でしたでしょうか、ちょうど尾形光琳作の国宝「燕子花図屏風」が公開されていたときでした。本作品は、いわゆる「琳派」の中では、俵屋宗達の「松島図屏風」と並ぶ有名作品です。この二つの美術館の開館によって、17世紀中期から後期にかけて、まだ三井家など企業体のパトロンが登場する以前の、江戸の職人・工芸文化が華やいだ時代の日本の芸術作品に触れることができる秋になりそうですね。

 

 ――と、秋到来に気分が高揚してのっけから自分の趣味の話題になってしまいましたが、もう少し続けさせて下さい。先の琳派を代表する二人の画家、俵屋宗達や尾形光琳の生きた時代――、その後、前代の桃山文化を継承し、寛永、元禄、化政と、文化芸術が華やいだ江戸文化が台頭する時代に突入していきますが、この時代にもやはり現代に名を残す著名人が現れました。その一人が松尾芭蕉です。

cf.財団法人 江東区地域振興会 芭蕉記念館

http://www.kcf.or.jp/basyo/

 松尾芭蕉と言えば、紀行文の『奥の細道』が有名ですが、今年2009年は松尾芭蕉が弟子の曾良を連れて江戸を発ってから320年と言われています。少し前に発売された雑誌「一個人」の特集は『「奥の細道」を旅する』でしたが、私も今から5、6年ほど前に、夏季休暇を利用して当社専務と「奥の細道」の軌跡(の一部)を辿る旅行をしたことがありました。飯坂温泉駅前の芭蕉像の前で記念撮影したり、芭蕉も旅の疲れを癒したと言われる飯坂温泉周辺の「鯖湖湯」に立ち寄ったものの湯温が熱過ぎて入れなかったこと、松島の遊覧船でカモメが飛びながらエサを食べる器用さに驚いたこと、最上川を舟下りした際に船頭さんが話してくれた「おしん」の話、出羽三山の一つ羽黒山にあった三神合祭殿の造り(茅葺屋根の厚さや総漆塗りの内部)に圧巻されたこと、山寺(立石寺)で蝉の声に耳を澄ませたことなど、今でも新鮮に思い出されます――。

 

 そんな芭蕉が言ったとされる有名な言葉・考え方に、「不易流行」(cf.「不易流行 - Yahoo!百科事典」)というものがあります。簡単に言えば、「不易」が時代を経てもその価値が変わらないもので、「流行」は時代と共に変わってゆくもののことを表現していますが、芭蕉はこれら二つは表裏一体のもので、統合されるものと考えていたそうです。これと一緒にしてはいけないのかもしれませんが、ふと、私たちが携わっているWebコンサルティングやWebマーケティング、Webデザインなどの世界においても言い当てていることがあるのではないかと感じたことを書いていきたいと思います。 

 

 ここでようやくタイトルにある「Webサイトにおける横幅サイズ最適解」の話になります。先に書いておきますと、結論として未来永劫これがベストだという横幅サイズはありません。なぜこのようなことを言うかと言いますと、まずは下の図をご覧下さい。

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 これは、当社が提供する、歯科医院の検索・予約ができるポータルサイト「歯科タウン」をモデルケースとして、実際に訪れたユーザーがどのくらいのサイズの表示域でブラウザを開いているかを調査したものとなります。当社クリエイターが試験的に行ったものなので、サンプル数は多くありません。左の数値は横幅サイズを降順で並べたもの(上位一部)で、右のグラフが一定の範囲ごとに集計した統計となります。

 意外だったのが、多くのユーザーが予想以上に高解像度のブラウザで閲覧されていることでした。また、画面を最大化(中にはブックマークなどのサイドバーを表示)して見られている方が多いようです。ここで「解像度」と言うと語弊もあるので、今回のコラムでは「画面解像度」(cf.「画面解像度 - Wikipedia」)のことを指して言うことにします。閲覧したユーザーが使用しているディスプレイの解像度だけを調べたいのであれば、Google Analyticsなどのアクセス解析ツールにある「画面の解像度」を見れば分かります。今回は、実際利用されているディスプレイが表示している解像度の画面の中で、ユーザーが具体的にどのくらいの大きさにしてWebサイトを閲覧されているかを知りたかったと当社クリエイターが言っていました。クリエイターも自己満足でWebサイトを制作しているわけではないので、納品したお客様からだけでなく、実際にもっと多くのアクセスをされてくるお客様のお客様(エンドユーザー)からどのような見られ方をされているのかが気になるようです。

 このアクセスのあったディスプレイの解像度、及び実際の表示サイズから想像される現在のトレンドは、およそ以下の順となりました。

1.1280×1024(SXGA,5:4)

2.1024×768(XGA,4:3)

3.1280×800(WXGA,16:10)

4.1680×1050(WSXGA+,16:10)

5.1440×900(WXGA+,16:10)

※6以降省略。左から、「ピクセル数」、「通称名」、「縦横比」となります。

 通常Webサイト制作は、この「ピクセル」(cf.「ピクセル - Wikipedia」)(または%)を単位として構築されます。例えば、ディスプレイの表示を100%から変更しないで閲覧している前提で、1.の1280を例にすると、画面横幅いっぱいのサイズが1280ピクセルということになります。ですから、横幅400ピクセルはどのくらいの大きさになるかというと、画面の横幅の約3分の1くらいの大きさということになります。しかし、この大きさの画像を4.の1680サイズのディスプレイで閲覧すると、画面の横幅の4分の1よりも小さく見えます。

 

 10月22日午前0時、先代の「Windows Vista」発売から2年9ヶ月、その前の「Windows XP」発売からちょうど8年を経て、新OS「Windows7」が発売されました。多機能・高機能化が進み、同時に大型ディスプレイの低価格化が進んだことで一般家庭まで普及し、文字通り「デスクトップ」画面はオフィスや家庭における「机上」と同意となり、様々なタスク(作業)を同じ平面上で行うことができるようになってきました。上記にある「16:10」は一般的なワイドディスプレイの規格ですが、この普及は家庭でパソコンを通じてテレビやDVDの閲覧をされる方が増えてきたことを示しているのかもしれません。ディスプレイサイズは、置き場所や使用者との距離の都合限界があると思いますが、近い将来、このくらいのサイズのディスプレイが今以上に普及してくるかもしれません。このくらいのサイズになると、画面の初期設定の横幅は最低でも1280くらいにはなっていると思います。

 これらのトレンドの遷移とWebサイト制作がどう関係してくるのかと言いますと、ユーザーが実際に開いている解像度以上の横幅サイズでWebサイトを制作すると、横スクロール用のバーが表示されてしまうことになります。この横スクロールはWebサイトのユーザビリティを著しく損なうと以前から言われてきました。かと言って、小さめ小さめに構築(特に左寄せのレイアウト)すると、高解像度のディスプレイで表示した際に貧弱な印象を与えてしまいます。場合によっては「リキッドレイアウト」(ウィンドウの幅に合わせてレイアウトの最大幅が変わるように、ピクセルではなく%で設計する方法)で組んだ方が良いと言われることもあります。つまり、時代の流れに合わせて、ベストな横幅サイズは微妙に遷移していくのではないか?といった仮説を立てることができます。

 

 この「Webサイトの横幅についての議論」は、今に始まったことではありません。ネット上でも多くの企業が試行錯誤していたり、Webデザイナーがブログで持論を展開していたりしています。例えば、私たちが「やはり、現状の社内の制作ガイドラインを疑い、そろそろ考えていくべきだ」と話題になったきっかけとなった以下の記事があります。

cf.So-net、トップページを4月1日よりリニューアル(japan.internet.com,2008年4月1日)

http://japan.internet.com/busnews/20080401/3.html

 ここでは、「ユーザーの利用環境に合わせ画面サイズの横幅を拡張することで、情報を一覧で表示」と書いてあります。他にも、各社ポータルサイトなどで一斉にリニューアルが行われたのもこの時期でした。

cf.

・リニューアル続出!ポータルサイトに何が起きたのか?その異変に迫る(MarkeZine,2008年4月21日)

http://markezine.jp/article/detail/3340

・総務省報道資料 総務省ホームページのリニューアルについて(2008年4月21日)

http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/2008/080421_2.html

 こうした一連の記事に目を通すに、私たちが意識しなくてはならなかったことが、Webデザインおいても、「時代とともに変わるトレンド」、「ユーザーのニーズ」、「対象となるサイトの利用目的」など、マーケティングの観点から変えてゆく必要があるものがあることと、冒頭にも引用した『ウェブ戦略としての「ユーザーエクスペリエンス」 5つの段階で考えるユーザー中心デザイン』にもあるように、「常に利用者のことを意識して設計する」という不変的な考え方を持ってWeb制作に取り組む姿勢が必要だということです。

ブランドはサイトのデザインで作られるわけではなく、あくまで企業やそのサイトが顧客に約束した「価値」で作られる。ウェブサイトだからといって突飛なデザインにすることなく、企業として、サイトとして顧客にどんな価値を約束するのかといった上位の概念からデザインの方向性を検討する。

/『ユーザ中心ウェブサイト戦略 仮説検証アプローチによるユーザビリティサイエンスの実践』(株式会社ビービット,武井由紀子/遠藤直紀著)

 

 最後に、冒頭の方でご紹介した「東京デザイナーズウィーク」の話をして終わりにしたいと思います。メイン会場では、企業もそうですが、美術系の学校や専門学校に在学中の方が自作の作品を展示されています。「これはどういう意図で創られたんですか?」と聞くと、ほとんどの方がその「制作意図、根拠」をしっかりと説明してくれます。これがWebサイト制作で言うところの「コンセプト」にあたります。専門課程でしっかり学ばれている学生さんの知識やわだかまりのない意思は、私も大変刺激を受けることがあります。

 「情報デザイン」と言うと専門的な話になりやすいですが、大概デザインは情報を有しています。海外旅行に出掛けた際にたとえ外国語の知識がなくても、トイレで男女の区別がつかなくて困るというケースは少ないと思います。また、雨の日にお店の軒先に傘立てが置いてあれば、誰しもが迷うことなく傘を差しますよね?まさか店員さんに「これはなんですか?」と聞くことはないと思います。D.A.ノーマンの『誰のためのデザイン? 認知科学者のデザイン原論』になぞらえて言えば、「傘立ては傘を立てることをアフォードする」とでもなりますでしょうか(cf.「アフォーダンス - Wikipedia」)。

cf.情報検定:J検 情報デザイン試験/(財)専修学校教育振興会 検定試験センター

http://jken.sgec.or.jp/guide/jdesign.html

 「情報デザイン」については、当社が加入している日本ウェブ協会の理事長を務められる森川眞行氏(cf.「森川眞行 - Wikipedia」)が専門ですので、専門外の私がご説明差し上げるのも誤った解釈があっては良くないのでこの辺にさせて頂きたいと思いますが(汗)。

 

 以上、私が見るCS本部は、改めてのご説明となりますが、Webサイトの設計を行うWebマーケティング部と、実際に構築を行う制作部とに分かれます。分業することで専門性を高める機能別組織(「ファンクショナル組織」/F.W.テイラー)となっていますが、今以上に品質を高めていく必要があるため、双方の組織にはもっと横串を通すべきだと考えています。もちろん今でも意識の側面では連携はうまく取れていますが、知識や技術といった実務的側面ではまだ課題が残ります。

 こうしたギャップを埋めるため、現在、日本ウェブ協会主催の勉強会、「ウェブ開発プロセス」への理解へ部員が何名かお世話になっています。今後もこうした仮説検証と学習、実践によって個々人の能力を高め、お客様へより高付加価値のサービスが提供できるよう努力していきたいと思います。

「USP(Unique Selling Proposition)」を創る ~社員総会と内定式、「ゆとり第一世代」を迎えて~

君の仲間の学生のなかには、教師や教育制度について不平を鳴らすことに忙しく、肝心の勉強に手がまわらない者が多い。制度は私の学生時代以来三十年間変わっていないし、おそらく今後の三十年間にも大きな変化はないだろう。(ほとんどの教育者も変わらない)。だから制度に不満を言うよりも、制度を巧みにだし抜いてやるといい!

/『ビジネスマンの父より息子への30通の手紙』(キングスレイ・ウォード著)

 私たちが仕事を進める中で、「USP(Unique Selling Proposition)」という言葉を頻繁に使用します。コンサルティング業界はとかく横文字を多く使うと揶揄されることが多いですが、Webコンサルティングを推進する当社でもどうしてもこの言葉だけは多用してしまいます。できればこれを機会に、このコラムをご覧になられる経営者、Web担当者の方々とは共通の認識を持ち合えれば幸いです。

 英単語の並びからも想像されるとおり、「独自の売り」「独自の強み」という意味で使用しておりますが、企業のWebサイト(ビジネスサイト)を構築する上で、市場の中で自社をいかに差別化して露出してゆくかが顧客の創出に関わるという考え方ですね。私たちは新規・既存問わず、お客様へのご提案の際にはまずこの「USP」に着目します。お客様の中には「そんな独自の売りなんてない」とおっしゃられる方もいらっしゃいますが、ヒアリングを進めてゆく中で他社ではなかなか真似のできない強みを持っていたりといったことも少なくありません。

cf.

・USPの重要性(2008年6月27日,木村 裕紀)

http://web-consultants.jp/blog/kimura/2008/06/usp.html

・USPが見つからない(2009年8月29日,並木遼太郎)

http://web-consultants.jp/blog/namiki/2009/08/usp.html

 企業で言えばマクロ環境分析、STPマーケティングといった小難しいマーケティング手法でUSPを洗い出してゆくのがセオリーなのでしょうが、そうした体系化されたノウハウがなくても、まずは以前このコラムでも引用した『コンサルタントの質問力』で言及されているようなヒアリングのプロセスの中で、自社の強みの発見に至れれば良いのではないかと私は考えております。

 今回のコラムではそうした独自の強み――、「USP」をどうやって見つけるか、また創り出してゆくのかということについて、企業を縮図化して「個人」にスポットを当てて考察してみたいと思います(cf.「自分戦略」)。

 ミドル、学生、節目をくぐる個人が、自問することになる相互に関連する問いがある。それは、さらっと答えるにはやさしく、真剣に考えるとけっこう難しい問いだ(中略)。エドガー・シャイン(Edgar H. Schein)は、つぎの三つの問いについて内省することが、キャリアについて考える基盤を提供するという。

1. 自分はなにが得意か。

2. 自分はいったいなにをやりたいのか。

3. どのようなことをやっている自分なら、意味を感じ、社会に役立っていると実感できるのか。

(中略)先の個人レベルのシャインの問いを、組織レベルに翻案してみよう。

1. わが社が他のどこよりもうまくできることはなにか。

2. わが社は、どこでどのような事業を営みたいのか。

3. その背後にある事業観や理念、そこで事業することの社会的な意味や価値はどこにあるのか。

/『働くひとのためのキャリア・デザイン』(金井壽宏著) 

※上記書籍の中では三つの問いについてそれぞれ、「能力・才能について」「動機・欲求について」「意味・価値について」という自己イメージを照射していると説いています。

 

 先日10月3日の土曜日には、第二四半期末の社員総会がありました(前回の様子はこちらの記事をご参照下さい)。例の如く、第一部は各部門長が期初に掲げた部門方針の進捗について発表をしますが、第二四半期末という時期は当たり前ですが今期折り返し地点である上半期末にも当たるため、進捗については自身でも発表しながら妙にリアリティを感じます。当社で節目にあたる時期に行われる社員総会ですが、多くの賞が設けられており、一生懸命仕事をして成果を上げているのに普段は目立たちにくいスタッフが主役となれるチャンスがあって表彰時はいつも盛り上がります。

■渋谷の某クラブを貸し切った社員総会、東京本社以外からも大阪・名古屋・福岡と、各拠点から全社員が一堂に会する日

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 さて、そんな社員総会、今年もちょうど新卒の内定式の時期にも重なり、当社でも10年卒の新卒者の内定式を兼ねました。日本経済新聞社が主要企業を対象に実施した調査によれば、10年卒の内定者数が、一般的に各社採用の落ち込んだ今春の入社者を34%も下回るということでしたが、当社でも今春に比べ少ない入社者数でした。

cf.

・2008年度・新卒者採用に関するアンケート調査結果の概要 (2009年4月10日,日本経団連)

http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2009/034.html

・2009年度新入社員の会社生活|調査報告書(学校法人産業能率大学)

http://www.sanno.ac.jp/research/fresh2009.html

 10年卒の新卒者は大学時に浪人や留年、休学等がない場合は1987年生まれかと思うのですが、企業の人事的側面から言うと、この年代に生まれた人を「ゆとり第一世代」と呼んでいます。小学校から高校卒業まで「ゆとり教育」を受けた世代ですね。この「ゆとり教育」という言葉を聞くと、どうしてもネガティブなイメージを持ってしまいませんか?

 個人的に思うのは、制度そのものの是非よりもネーミング自体が気になったものでした。いわゆる「総合学習(総合的な学習の時間)」を導入したことが特徴的な制度でしたが、テレビやネットなどメディアを介して伝えられるイメージによりネガティビティ・バイアス(cf.『社会心理学』/亀田達也・村田光二著)がかかり、誤った教育法である印象を受けました。

 むしろ、私の世代の教育手法も一般的には「内容知中心」と言われ、「受験戦争」という言葉が示すとおり暗記主導の授業が多く、授業によって自身で考える力が身に付いたかと言えば懐疑的でした。経験主導の「方法知中心」の教育方針であれば、社会に出てからこんなにも焦っていろいろ学ばなくても基礎的な力が備わっていたのではないか?とか、もしも当時、今のように体系化されたフレームワークに沿った自己理解や問題解決のプロセスを学べる授業があれば、もっと就職活動時に主体的な自分を押し出せたのではないか?と、過去の教育体制のせいにしたくなるときもあります。

 例えば、算数嫌いになる最初のきっかけではないかと個人的に思っていた「三角関数」。Web業界を例に出して言えば、Flashアニメーションなどを制作するクリエイターであれば基本的な知識かもしれませんが、波形などの動きを表現するのに、例の「サイン」「コサイン」の値を計算して入力することがありますよね。当時、目的もよく分からないままに、ただ「公式(内容)」だけを覚えさせられましたが、仮に「将来Webクリエイターを目指している人は特に必見!」などと言って、実際にパソコンの画面でFlashアニメーションを用いたWebサイトなどを見せながら、値を変える度に波形が変わる「方法」を説明されたら、もしかしたら興味を持って授業に取り組めたかも!?

 ――と余談はさておき、コラム冒頭でカナダの実業家であるキングスレイ・ウォードが二度の心臓の大手術を受けたことで、生きている内に自分の経験から学んだ人生の知恵やビジネスのノウハウを息子に伝えようと書いた30通の手紙をまとめた『ビジネスマンの父より息子への30通の手紙』を引き合いに出しましたが、本書が日本で刊行されたのが1987年、ちょうど「ゆとり第一世代」が生まれたときのことです。教育制度は今後30年間大きくは変わることはないと書いていますが、わが国日本ではその後大きく揺れ動くこととなりました。しかし、本質を見失わないという意味では、普遍的なことを言われていると思います。

 

 私たちの仕事の中で、大きなところで言えば新たに部課、チームが創設されるとき、新商品導入時、新規プロジェクト、部内の教育制度まで含め、この「ネーミング」は強く意識しています。「名は体を表す」とも言いますが、言語学でも記号学でも認知学でも、物や状態、感情を示す際に「言葉」を必要としますが、それらと「意味」とは三位一体の関係であるので、つまり言葉は意図を正確に表し、伝えるためのものでなくてはならないというのが私の持論です。会議の目的や各種プロジェクト、チームの名前等、そこを適当に行うと結果が変わってきてしまうことがあります。

 余談になりますが、例えば、社内で「顧客満足」を推進するためのプロジェクト体制を敷くことになったケースを想定してみて下さい。極端な例かもしれませんが、以下の例を見て下さい。

 

1、「クレームを減らす体制づくりプロジェクト」

 

 この名前のプロジェクトで、果たして「顧客満足」を推進できるでしょうか?とてもできそうな感じがしないですよね?これは、顧客不満の要因の一つにスポットを当て過ぎてしまっています。いわゆる「木を見て森を見ず」的状態になってしまいます。

 

2、「仕事に関わる人すべてをハッピーにする体制づくりプロジェクト」

 

 こちらの場合は、大変夢のあるプロジェクト名ですが、想定される成果はかなり規模が大きく、理念やスローガンに近い「顧客満足」の域を超えた広過ぎるものですよね。参画したスタッフそれぞれの価値観に依存するため方向性がぶれやすく、先の目的を遂行する上では結局は結論が出にくい印象があります。

 

 では、以下の2つを比べた場合はどうでしょうか?

 

3、「お客様を満足させる体制づくりプロジェクト」

4、「お客様が満足する体制づくりプロジェクト」

 

 一見して同じような意味ではないかといったイメージを持ちそうになりますが、何か印象が異なりませんか?そうですね、「主語」が違います。文字数で言えばたった1文字、"てにをは"が変わるだけで、目的や求められる成果、議論やタスクの洗い出しなど、その後の関わるスタッフの意識や行動パターンが変わってくることもあるのです。

 

 そういった観点で見てゆくと、「ゆとり教育」という「内容(対象)」を示す「言語」で想起する「意味」は、意図や実態がそうでなくても、どうしてもネガティブなイメージになってしまうというわけです。文明の発展に伴って、より高次の教育と人財が求められ、手段がイノベートされてゆくことは悪いことではありません。しかし、異なる教育方針下で育った人同士が互いに尊重し合わず、優劣を決めるための材料とするだけである状態は建設的ではありません。私たちはそういった心理状態に陥らずに、もっと民度を高く持っていたいと考えますが、「ゆとり教育」という言語情報の伝達過程におけるコンテクストのズレ、1対複数のコミュニケーション(マスコミュニケーション)の恐ろしいところであるとも感じました。

cf.「ゆとり」という表現 ネットでは他人けなす言葉(J-CASTニュース,2007年9月11日)

http://www.j-cast.com/2007/09/11011193.html

 

 ところで、この「ネガティビティ・バイアス」ですが、私たちの身近なところでもよく起こり得るものだと思います。顕著なのが、昨今の出版物だと思います。時代を反映してか、ネガティブ・イメージで語尾を締めるタイトルの新書が多くあります。「~できないのか?」「~できない理由」「~ダメにする」、挙げれば枚挙に暇がありません。出版は、その他テレビや新聞などと同じように多くの大衆にリーチするメディア、流通であると言えます。 まるでコンプレックス商材を扱うように、フィア・アピールするかのようなタイトルの書籍が目立ちます。一般的なビジネスシーンにおける、例えば会議での議論や、プロジェクト進行、マネジメントなどの状況下で好循環を生むと言われる手法――、ダメである原因を列挙するのではなく、「どうすればできるようになるのか?」について考えたり、否定的な言葉を肯定的な表現に言い換えて発するようにする行為とは対極にある発想だと思います。そうした書籍の多くは、著者か編集者の意向で逆説表現にした方が売れるといった発想で、他社が成功すれば右へならえでタイトルを決められているのかと思いますが、こうした書籍が氾濫する社会を目の当たりにする読者のことを考えて決められているのかは甚だ疑問に感じています。いくら内容が逆説的に書かれていても、こうした「言葉」が想起させる「意味」にはどうしてもネガティビティ・バイアスがかかって、「だから自分はダメなのか」といったネガティブな自己解釈を促してしまうように思います。同じように、ネット上の掲示板やコミュニティなどでも、ネガティブな意味を示す問いに対する回答欄は、ときに第三者同士でさえも荒れる傾向があるように感じています。

 人間の弱点を表すことばは豊富にあり、細かい点まで指摘できる。(中略)それに対して、強みを表すことばは実に乏しい。

/『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう あなたの5つの強みを見出し、活かす』(マーカス・バッキンガム&ドナルド・O・クリフトン著)

 強みや長所を伸ばす、褒めるといったマネジメントの基本要素も、ポジティブな情報のインプットの土壌があるから育まれるように思いますし、上記のように「ダメな理由」ばかりをレパートリーに増やして「弱点」に対する批判ばかりを学んでも解決思考は育たず、むしろ批評家を生むだけではないかと思いました。そして、この「強みや長所を伸ばす」といった発想こそが、先の「USP」を発見するのに必要な基本的発想でないのかと考えています。

cf.自分の「気がついていない強み」を知る方法(2009年10月2日,日経ビジネス Associe)

http://www.nikkeibp.co.jp/article/nba/20090930/185235/

 

  以前のコラムで、私の就職活動期について触れたことがありましたが、歴史の浅いIT業界やベンチャー企業が急成長を遂げた一因として、「既成の枠にとらわれることなく良い点、強みだけを伸ばすことに注力できたこと」を挙げてみたのですが、来春迎える予定の「ゆとり第一世代」に対しても、同じようにアプローチできないかと考えています。もちろんこうしたポジティブ・シンキングだけではリスク回避ができなかったり、疲弊感を感じてしまったり、プレッシャーに押し潰されてしまう人もいると思うので使い分けも重要かと思いますが。

 

 さて、以上、ざっくりとではありますが、「強み」に目を向けるポジティブ・シンキング(または、プラス思考)が「自身の強み」を生み出す原動力であることを説明できたように考えています。これだけでは企業のUSPを創り出すことはできないかもしれませんが、習慣化させてゆくことで、他者(他企業)と比較して自社の長所を引き出すことに慣れてくるようなことがあります。まずは自社の強みと思われる要素にスポットを当て、書き出してゆくと良いと思います。書き出してゆくプロセスの中で、競合他社との比較を自然と行っているでしょうし、市場のこともイメージしている筈です。そこにリサーチなどの定量的な数値、科学的根拠が加わればマーケティングも厚みを増してくると思います。

 会社を経営されている方は、普段から自身の強みを把握してそれを仕事に活かしておられる方が多いので、先にも述べましたが、私たちがWebコンサルタントとしてヒアリングを重ねる中で、社長ご自身が潜在的に考えておられる「自社の強み」を是非私たちと一緒に言語化して、自社のWebサイトに掲げていきましょう。


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写真 執行役員CS本部長 小川 悟

Twitterやってます。CS本部はディレクター、ライター、Web/映像クリエイター、QC(品質管理)スタッフ、Webアナリスト、コンタクトセンターからなる部門です。中小・ベンチャー企業向けWebコンサルティングを提供する上で必要な人財の育成、生産管理、サービス体制の整備を行い分業・専門化を進める傍ら、営業部門やお取引先様も巻き込み、各工程別ガイドラインの整備や業務の標準化はもちろん、前工程・後工程のスタッフを「みなし顧客」として成果のフィードバックを行うことで内部牽制したりといった品質管理を行っております。また、一部広報業務も兼務しています。座右の銘は「桃李言わざれども下自ずから蹊を成す」(『史記』/司馬遷)