中小・ベンチャー企業も注目するASEAN市場 ~アジアビジネス関連セミナーや、ベトナム出張を通じて~
投稿者:小川 悟
2011/07/30 16:59
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それにつけても思い出すのは、ある開発途上国に出かけていった二人の靴セールスマンの話である。一人のセールスマンは本社に次のような電報を打った。「当地にて靴を履く者皆無。セールスの見込み全くなし」。もう一人のセールスマンの電文はこうだった。「在庫の靴全部送れ。当地の住民は皆裸足。市場として絶対有望」。
/『MADE IN JAPAN わが体験的国際戦略』(盛田昭夫,下村満子,E・ラインゴールド共著)
今回のコラムは私個人の話から始めさせて頂きますが、7月はアジアビジネスに関する多くのセミナー、イベントに参加しました。
7日はブレインワークスグループ主催『Asia Business Conference』、10日にはベトナム人留学生の集いのイベント、翌11日は日経新聞社主催の『グローバルリーダーズフォーラムキックオフセミナー』、20日には東京商工会議所主催の『中小企業のための国際展開セミナー』、そして、月末には当社代表の木村とベトナム出張をし、見聞したことも多いため、個々の詳細は割愛させて頂くものの、各所で感じたことなどを包括して感想を述べさせて頂きたく思います。
※ホーチミン出張時、空き時間に行ったBitexco Financial Towerのスカイデッキにて。入館料に20万ベトナムドン(約757円)かかる。地上68階、高さ265.5m(六本木ヒルズ森タワーは、地上54階、高さ238m)、周辺はまだまだ発展の余地を多く残していると思う。
月末には私にとって3度目となるホーチミン出張がありました。
今さらながら不思議に思ってしまうことがあります。ファーストフード店で言えばロッテリアやKFCはあってもマクドナルドはありません。日本製インスタントラーメンと言えば日清食品製品は現状まだ市場浸透しておらず、エースコック製品が並んでいます(日本国内のシェアでは10%を切るがベトナム国内ではシェアNo.1)。ブランド利用者数で見ると「Honda」が海外勢やベトナム国内ブランドを退け1位(交通手段はバイクがほとんどであるため)。しかし、個人宅に行ってテレビや洗濯機等の家電製品をチェックすれば、ソニーやパナソニックではなくサムスンやLG等の韓国勢が多かったり。当然ながら日本人の感覚からすると、まだ何となく違和感を感じます。
他にも、ベトナム初のモッツァレラチーズの生産販売(cf.ブログ『毎度おおきにホーチミン。』/masukodagama氏)はつい最近の話だったり。地下鉄は走っていないし、ホーチミンだけで700万人以上いるのにボーリングやビリヤード、ダーツ、カラオケといった娯楽施設も極少数で、ゲームセンターなどはありません。
日本で当たり前のことがベトナムでは当たり前じゃないこともしばしば。どれも小さな話のようですが、日本国内にいると体感できないことばかりで、こういったことはベトナムに限らずどの国でも起こり得る話でもあると思いますが、実際に現地に赴くか、中長期で滞在しないと気付かないことも多いです。
さて、前回のコラムでも書きましたが、今の日本における少子高齢化、人口減少、成熟社会、内需縮小、円高、エネルギー問題といったマクロ的指標で見た際のリスク要因に対する措置としては、長期的視点を求められる大企業の方が早く手を打っていると思うのですが、3.11の震災以降は中小・ベンチャー企業にとっても、業種・業態によって経営的煽りを受ける企業も多くあり、海外進出、殊アジアを中心とした新興国への進出・進出検討が増えていると聞きます。それは、先に書いたようなセミナーやイベントが多く主催されたり、テレビのニュースや特番などで度々テーマとして扱われるようになってきた風潮からも感じ取ることができます。
極めつけは、11日に発売された『週刊東洋経済』(特集:「6億人の消費市場を狙え! ASEAN」)でしょう。本誌のアジア特集ならば、近年の中国台頭などもあって以前にも特集されたことはありましたが、今回はASEAN――、つまり東南アジア特集です。今の東南アジアが、ビジネス誌の切り口でどのように語られるのか興味がわき手に取ってみたものでした。
誌面には、ASEAN諸国の国土面積や人口、GDP、PC・携帯普及率、消費力、日系企業の進出社数を比較したデータや、宗教や文化、法律、基幹産業、インフラ、国民性など、地政学的観点も踏まえて分析した上で「こう攻める」と箇条書きで書かれた戦略指南などがコンパクトにまとめられていて、興味本位で見るだけでも楽しめる構成になっていました。
ビジネスの側面におけるASEANの市場機会として、「(中間層が増大しつつある、6億人の)消費市場」、「(チャイナプラスワンとしての)生産拠点」、「中国・インドという2大新興国を中心とした商取引上の中継地点」が挙げられるかと思います。
確かに人口をとってみても、国力の指標の一つになり得ると思います。アジアでは世帯可処分所得が年間5,000ドル以下の、いわゆる「低所得層」が6割以上いると言われます。『コア・コンピタンス経営―未来への競争戦略』を書いた、故C・K・プラハラード氏が『ネクスト・マーケット 「貧困層」を「顧客」に変える次世代ビジネス戦略』の中で、「Bottom of the Pyramid」と呼んだ――、最近では「Bace of the Pyramid」(BOP)と言い換えられた、つまり、世界に40億人いると言われる、1日あたり2ドルで生活する貧困層へ向けたビジネスも近年注目を浴びているようですが(cf.『BoPビジネス戦略 ―新興国・途上国市場で何が起こっているか』/野村総合研究所著)、これも人口という市場規模をベースとした考え方かと思います。
他にも、諸外国から格安航空会社(LCC=Low-Cost Carrier)が就航し、全日空・日航も新会社を設立・検討段階に入ってきていたりと、私たちの生活に身近なところでも変化が起きています。日本へ訪れる外国人観光客が増える期待が高まりそうな一方で、旅行代理店などでは航空券手配時に利用されなくなり収益低下を招くことも考えられそうです。私もどんなものか試しに、今夏計画しているプライベート旅行で旅程の一つをエアアジアで予約してみました。
前回のコラムでもお伝えしたように、今後の日本のビジネスシーンでは、製造業だけでなく、IT/Web業界やサービス業界、その他の業界であっても、アジア進出の機運が高まってくるような気がしています。それは、先進国である日本に元気がなく、逆に新興国、とりわけ対日感情の良いASEAN諸国が若くて勢いがあり、成長の伸びしろがあるように思えるのと、既に業界を代表するような勢いのある日系企業が市場を取りにいっているからです。
cf.
■「中小企業経営者500名へ海外進出に関する調査報告」
http://www.miraiz.co.jp/release2999.html
■ASEAN主要6か国における対日世論調査(外務省,2008年)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/h20/5/1179515_907.html
当社でも、今後増えてくるだろう中小・ベンチャー企業様のアジア進出時の、Webやネット広告に対するご期待にも応えられるように、当社でもそういった事例を増やしておきたいと思いました。