進む?止まる?壊れる?組織マネジメントを考える
投稿者:吉田 亮
2012/03/07 23:12
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『あの人、いつ仕事をしているのかしら?』
ある程度、企業という組織が大きくなると、
黒髪で長髪の美人OLが、
休憩中のカフェテリアでこんなことを呟く場面が増えてきます。
とにかく増えてくるのです。
隣の席に座っている人の動きはほとんど把握できますが、
組織が大きくなり、偶にしか見かけない他部署の人が
実際にどんな仕事をしているのかなど、把握できる訳がありません。
それは至極当然の疑問で、あまりにも当然の呟きなのですが、
この疑問は、組織の分かれ道になる可能性も秘めています。
ここで、ちょっとだけ考えてみてください。
●組織が『進む』要因になるものとは?
●組織が『止まる』要因になるものとは?
●組織が『壊れる』要因になるものとは?
それぞれに、
「モチベーション」「チャレンジ精神」「報酬」「カリスマ性」
「ルール」「逆に安定感」「リーダー不足」
「コミュニケーション不足」「目的の形骸化」「不況」「離職率」
などなど、
それはもうたくさんあるとは思うのですが、
おそらく、全て正解でしょう。
つまり。
まとめてしまえば、そもそもそれらの要因は
必ず全ての組織に存在し、
強弱はあっても、ある程度の規模の組織であれば、
段階によって生まれたり消えたりするものではありません。
だから、全て正解なのです。
全て正解のものを、局所的に解釈したところで、
要因に辿り着くことはできそうにありません。
良いモノも、悪いモノも、内包しているのが組織であって、
良いモノしかない組織は存在しませんし、
そもそも、良い悪いは、誰かの主観に過ぎません。
進む組織。止まる組織。壊れる組織。
その結果をもたらしたモノが、それぞれの要因でないのであれば、
結果を決める理由として考えられるモノは何なのでしょうか。
これら全てに共通しているキーワードがあります。
それはバランスです。
一定の規模に成長した組織に生まれるのは、たいていが、
攻める人間 と 守る人間
の2種類に分かれます。(と、しましょう)
これは、最初にバランスが必要となる要素です。
組織が『進む』ためには、
【攻める人間】がいなければ進みそうにはありませんが、
【守る人間】がゼロの組織が、『止まり』そして『壊れる』、
というのも、容易に想像がつくと思います。
ここで、サッカーを例にとってみます。
これほど攻防のバランスで成り立っているスポーツは
他にないと思いますが、
全世界におけるサッカーチームにおいて、
攻めだけのチーム、守りだけのチーム、などという組織は、
ひとつもないと断言できます。
答えは簡単です。
それでは勝てないからです。
それぞれのチームには、
メインとなるレギュラー(社員?)が存在し、
フォーメーション(組織図?)というものがあり、
そのバランスによって、
チーム(組織?)の方向性や戦略が決まっています。
それが、チームの【特色】になります。
・固めの守りからカウンターで逆転するのが得意なチーム
・中盤にボールを集めてサイド攻撃に特化したチーム
・攻撃的なパスをつないで相手を崩してしまうチーム
・選手を入れ替えるだけで攻守のスタイルを変えられるチーム
パスを意識しすぎて決定力不足、
なんていうチームもありますが、まぁそれは置いておきましても、
その組織に適したバランス。
というものが必ずあるのです。
同時に、
そのバランスにした理由、も必ずあるはずなのです。
なければなりません。
10人くらいの組織であれば、
攻守のバランスだけでも事足りるかもしれませんが、
人数が増えれば増えるほど、
組織に必要な、
バランスをとらなければならない『要素』
は、増えて行きます。
例えば、ざっくばらんに書くと、
10人:
勢い、攻め、守り、リーダーシップ
50人:
勢い、攻め、守り、リーダーシップ、目的、部署、マネジメント
100人:
勢い、攻め、守り、リーダーシップ、目的、部署、マネジメント、理念、技術、部署ごとのリーダーシップ
200人:
勢い、攻め、守り、リーダーシップ、目的、部署、マネジメント、理念、技術、部署ごとのリーダーシップ、部署ごとのマネジメント、ファシリテーション
これが、成長に比例して組織マネジメントが難しくなっていく理由です。
人数が増えるとマネジメントが利かなくなるのは、
規模によって必要な要素が増えるばかりか、
その中で、同じ問題を持った組織同士が衝突するからです。
~とある風景~
・・・・・・・・・
A部代表「うだうだしてても仕方ないから、とっとと進めよう、ヒュっとして、バシッと決めたら終わりじゃん」
B部代表「いやいや、バシッの意味がわからない。まだその時期ではない、基盤固めをしないと足元すくわれる」
A部代表「じゃあ、いつ?固めてる間に時代なんか変わっちまうって」
B部代表「やらないとは言ってない、性急すぎると言っている。何事も計画的に行動するべきだ」
A部代表「その計画いつできんの?そうやってもう1年以上も経ったじゃん。いきなりなんて自分も考えてない、でも、手はつけて行かないと」
B部代表「・・・それは・・・一理あるか。ではまず、うちから適性のある1名は出せると思う。それ以外は意識改革してからでないと難しい。そちらは?」
A部代表「もちろん俺と、あと3人くらいはイケる。とりあえず、パートナー先に片っ端から交渉してみる。そっちの方が得意なんで」
B部代表「・・・わかった、企画書はこっちでやる。1回、メンバーで集まって共通認識をとろう」
A部代表「お、確かに、さすが。よっしゃ、一気に行くぜ!」
C部代表「待て待てっ、そんなことしたらうちの部署のフローが変わるじゃないかっ!」
・・・・・・・・・。
非常に良くある光景です。
良くある光景ですし、組織には必ずある光景です。
この良くある光景自体に、実は良し悪しはありません。
一見、
A部の方が推進力を持ち、
B部の方は腰が重く、
C部の方は乱入しただけのように見えますが、
そうとは限りません。
B部の方のような慎重さがリスクを回避し、
C部の方の横槍が後々の大事故を防ぐ、
という状況だって、大いに有り得る訳です。
この光景が、
『進む』段階のものなのか、
『止まる』原因になっていくものなのか、
『壊れる』引き金になるのかは、
そのときの組織のバランスにかかっているはずです。
そのバランスを見極めるのは誰か。
・・・残念ながら、その答えにまで私は辿り着いていません。
それは経営者である場合もあるでしょうし、
各部署を司るリーダーが賄うべきときもあるでしょう。
リーダーの中の一部の方が結果を出しやすい可能性もありますし、
そもそも、社員全員が持てば最強のような気もします。
しかし、そうでないような気もするのです。
結局、それさえ、状況によって左右されそうである、
というのが正直なところなのですが、
組織マネジメントにおいて考えなければならないのは、
・いま、その組織に必要な要素は何か
・その要素のバランシングはどうか
この2点に集約されていると言っても良いかもしれません。
大切なことは。
ひとつの局面における矛盾や葛藤だけに答えなどなく、
常に、組織の中のひとつひとつの存在をつなげようとする努力と、
目線の一歩先で何が起こるかを予測する日々こそが、
組織を『進める』ためにできること、だと思うのです。
仕事ができること、仕事が速いこと、
チャレンジ、タフネス、ビジネスセンス、英断、etc…
もちろん重要なことなのですが、
それだけでは組織マネジメントは成り立ちません。
レギュラーではないのにチームのキャプテン、という方がいます。
宴会部長、という名誉ある役職に就任している方がいます。
彼等は、バランサーなのです。
ですので、『あの人』は、仕事をしていない訳ではありません。
きっと何処かで、バランスをとっているのです。
何処でだろうか?
・・・そう考えれば、
アンニュイな午後のコーヒータイムも、
一味違ったものになるかもしれませんね。