Web社内報開設にあたり ~”人間尊重”と”調和”を生み出す職場づくり~

投稿者:小川 悟

2009/06/28 10:47

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自己最適化しやすい人間が、自分のことを後回しにしてでも、その目標・価値観に「のってくる」ためには、努力や工夫をしなければならない。それは、自分を逆の立場において考えてみれば、容易に想像がつくことである。しかし、共有化できた瞬間、変化は生まれる。

/『不機嫌な職場 なぜ社員同士で協力できないのか』(高橋克徳・河合太介・永田稔・渡部幹共著)

いよいよ当社は、第一四半期末にさしかかりました。今期ゴールビジョン達成のための重要なファーストコーナーのカーブにさしかかったあたりと言えるでしょう。来月の頭には恒例の社員総会があります。各自が全社員と顔合わせをするのは、前期末の社員旅行兼社員総会のとき以来となります。各自・各部課のリーダーたちが、この第一四半期の成果と今後の抱負を全社員に対して発表する数少ない機会でもあります。

さて、私個人としてここでお話しようと思うのは、今回のタイトルにもありますが、当社オリジナルの「Web社内報」のご紹介です。今期に入って、私が見るCS本部を含めた当社の新体制についてこの場を借りてご説明したことがありました(cf.「第9期新体制、CS本部は「マーケティング力」と「クリエイティブ力」の強化を推進 ~内定取り消し時代の新卒入社者を迎えて~」)。その際実は、私は組織としてCS本部を見る業務の他、社長直轄業務として「社内広報」の役割を担わせて頂くこととなりました。

私事で恐縮ですが、この「広報」の業務、実は今から10年以上も前に就職活動をしていた頃から将来やりたい仕事として、自己プロフィールや企業応募用の作文に書き連ねていたものでした。社会人1年目のときはそれが適わなかったものの、縁あって広告代理店での仕事に携わることができました。しかし、「広告」と「広報」との違いについてある程度正確に分かってきたのもこの時期のことでもありました。それから2回の転職をして今の会社に籍を置いているわけですが、創業間もない頃に広報業務も何もあるわけがなく、入社当時から非営業職ではありましたが、ひたすら「売上げを上げるために自分に協力できることは何か?」しか考えないようにしていました。しかし、広報業務に対する興味は諦め切れず、いつかこの会社が成長期に突入したときは、そのときこそ上司に進言しようと心に秘め、宣伝会議発行の『PRIR』(現『広報会議』)の定期購読を始め、独特な業界のトレンド収集については遅れを取らないように心掛けてきたつもりでした。そこが買われてというわけではありませんが、前期第四四半期あたりから現社長よりこの構想について話を聞く機会が増え、自ら進言するまでもなく、この度の実現に繋がりました。やっぱり夢を諦めないことは重要ですね。

 

まず私が取り組んだのが、前期末あたりから少しずつ進めていた「Web社内報」の制作です。もちろん私自身ですべてできるわけではなく、CS本部のリソースを借りて当社で扱いのあるMovable Typeを用いて制作しました。今後の活用イメージを想像すると、CMSで構築した方が都合が良いだろうと考えていました。

cf.サービス紹介 CMSでのサイト構築|Webコンサルタント.jp

http://www.web-consultants.jp/service/website/

当初企画した諸々のコンテンツのご紹介に関してはまた別途機会を設けることとして、この「Web社内報」、社内からのアクセスしかできないようにしてあるのですが、開設2ヶ月目でなんと月間3万PVに達することができました。全社200名の当社ですので、1人あたり平均150PVということになり、今期の経営テーマ「百花繚乱」の実現のために底辺に位置するインフラ構築ができ、出だしとしては順調ではないかと思っています。

cf.参考サイト

・社内広報の目的と社内報の役割とは(ネットPR.JP – netpr.jp – /株式会社ニューズ・ツー・ユー)

http://netpr.jp/column/003249.php

当社Web社内報の開設目的の主なるものとしては、経営方針の理解や高業績者のモデリングのための情報共有といった要素もありますが、まず何よりも、共に働く仲間を知ること、そして普段は日陰となっているがコツコツと努力を続けて重要な仕事を担ってくれている仲間を、会社としてキャッチアップして全社員に知らしめることという思いがありました。

「一度撫でた犬の吠え声は気にならない」という格言集にはある。なるほどと思う。(中略)知ることがどんなに人間心理を楽にするか、ということの例として際立っていると思う。

/『冒険する社内報』(福西 七重著)

何を考えているのかわからない人と仕事をするのはストレスが溜まる。上司と部下はその最たるものだ。(中略)社内報は、社内の誰をも「彼も人なり、我も人なり」と感じられる素材を提供する場だ。「みんな眠い目をこすりながら、今日も仕事に行くぞと起きるのだ」と、自分の姿をみんなに重ね合わせることができる場でもある。

/『もっと冒険する社内報』(福西 七重著)

会社にもよるのでしょうが、通常の企業では各部門ごとの役割や責任を切り分けたり、教育効果を最大化するために業務内容によって部門を分けます。そうすることで自部署の専門業務に特化でき、当事者意識が芽生え対外競争力を生み出すことにも繋がりますが、それと同時にいつの間にか企業の成長にとってまさに障壁となる「カベ」ができていることがあります。その状況を、ときに「縦割り組織」だとか「セクショナリズム」だとか、飛躍して「大企業病」とくくられて言われることもありますが、決して組織が潤滑であるとは言えないのではないかと思っていました。

 

今から約20年前の1988年6月、リクルート関連企業であったリクルートコスモスの非公開株を巡って、実に90人を超える政治家がこの株の譲渡に絡み、政界首脳陣が収賄容疑で新聞紙面を賑わせた「リクルート事件」が起こりました。その記事の見出しが朝日新聞紙面上に大きく踊った際(cf.『追跡 リクルート疑惑 スクープ取材に燃えた121日』/朝日新聞横浜支局,朝日新聞社)、リクルート社員の混乱を鎮め、その後社員間の一致団結に一役買ったと言われる、当時リクルートの社内報「かもめ」を創刊、その後編集長を就任されていた福西七重氏が、後に創業された株式会社ナナ・コーポレート・コミュニケーションから発行されている、『ギスギスした職場はなぜ変わらないのか』(手塚 利男著)の中で、この「カベ」について説明されたページがあります。

どんな「カベ」があるのか?

●個人の心の中のカベ

・利害関係という名のカベ

→「ほかの社員に手柄を取らせたくない」という思いからできるカベ

・自己保身という名のカベ

→「目立たず無難に仕事をするのが最善策」という保身からできるカベ

・諦めという名のカベ

→「どうせ、努力しても報われない」といった諦めの気持ちからできるカベ

●それぞれの部署が作っているカベ

・利害関係という名のカベ

→「自分の部署の利益を守りたい」という思いからできるカベ

・非協力という名のカベ

→「他部門への協力を求めず、自分の部署で仕事を完結させよう」とすることからできるカベ

/『ギスギスした職場はなぜ変わらないのか たった一人からでも始められる「職場活性化」の方法』(手塚 利男著)

上記にある各自・各部門ごとの「思い」は、これだけではネガティブなものとは言えないと思います。これらの思いの内のいくつかは部分最適の要素は持ち合わせており、成長意欲の裏返しであるとも見てとれます。しっかりとマネジメントすることで大きな力を得ることができるのであって、すべてではないにしろ、まず先にこうした「思い」があった方がむしろ職場は活性化するのではないかと考えています。

それではどうしたときにこれらが良くない方向になびいていってしまうのか?その見極め方として最も簡単な方法が、それらの思いの先に、確固とした「お客様のために」という目的意識があるかどうかだと思います。

お客様からしてみれば、このどれもが直接自身には関係のない話であって、自社内で解決しておいてもらいたい内容である筈です。「”自分のために”そう思っている」内は、自分を取り巻く問題については解決できたとしても全体を解決するまでには至りません。

さらに突っ込んで考えると、どんなときに自分のことばかり考えてしまうのか? 自分の立場が社内で弱いときに多いような気がしています。そんなときは、本来「お客様のために」考えなくてはならないとは分かっていても、自分の立場が弱くてはそれどころではありません。まさに、「ない袖は振れぬ」状態ですね。逆を考えると、「お客様のためになるために、自分が職場で強くならなくてはならない」という考え方が生まれてくると思いますが、それこそまさに当初自身が望んでいた「自分が強くなる」ということなのではないでしょうか。この原理原則が見えないままにがむしゃらに働くのは、見えない敵と戦っているのと同じで、いつか自分か、または自分に関わる相手を傷つけてしまうのではないかと考え、それを忘れてしまいそうなときにはいつも以下のコラムを読み返すようにしています。

■人材育成の「隠れたホットテーマ」は、なんと顧客との関係だった(bpspecial ITマネジメント/日経BP社)

http://premium.nikkeibp.co.jp/itm/col/ookubo/012/

話を戻しますと、職場にカベのできた状態というものは、まるでバベルの塔の神話のように土地や言語を分かたれたバビロンの民が、やがて互いに争いを始めるにまで至る人間の性とも言えるのかもしれません。当社社長がよく申し上げておりますが、「会社は社会の縮図」であると思います。ましてこのように昨今の不況だとか、努力しても報われにくい世の中だとか言われている時期にあってはなおさら意識して考えたいですね、人と人との繋がりの重要性というか。そうやって事前に分かり切ったプロセスで陥ってゆく悪いスパイラルがあるとすれば、私たちはそうならないように、お客様のためにもっともっと民度を上げていかなくてはならないと思っています。

 

以上、「Web社内報」立ち上げに絡む話が、横道にそれながら思いのほか長くなってしまいましたが、一言で集約すれば、当社の掲げる行動指針にもある、「人間尊重」と「調和(協力、競争、共有)」にも繋がる媒体だと考えています。正確に言えば、それら行動指針から派生した媒体ですが、来る7月4日の社員総会では、これら各行動指針に対する賞が設けられています。

今後、既存のお客様はもちろん、これからお会いするお客様へサービス提供を行ってゆくわけですから、「中小・ベンチャー企業向けWebコンサルティングNo.1企業」を目指す中で、そうした全社的な総会で評価を受ける者を少しでも多く増やして成果を上げられるような職場づくりをしていきたいと思います。第一四半期の締めくくりとして。