自社を語る、自分を語る中で主体性を確立する ~管理者合宿研修を終えて、「人財」育成に大きな使命感を持つ”
投稿者:小川 悟
2009/07/26 20:35
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もし、幸運にも、あなたの組織で語り継がれている物語があったなら。
あなたも、それを、語り継いでください。(中略)
そして、人の物語を真剣に聞いた別の人が、こう語り始める様子を、何度も目にしています。
「そういえば、私にも、こんな物語があった」
物語は、物語を誘発し、人と理念、人と人とをつなげていきます。
/『感じるマネジメント』(リクルート HCソリューショングループ編)
先週は管理者向けの合宿研修がありました。合宿形式で研修が行われたのは、昨年に続いて2度目となります。合宿形式の研修のメリットの一つは「環境」にあると思っています。同じ話を聞くのでも、いつもの職場で聴くよりも集中して聴けますし、自分から話をする機会は多く与えられますし、普段よりも開放的になって話をする内に今まで気が付かなかったことに気が付けたりすることもあって収穫が大きいです。
今回の研修で面白かったのは初日の終盤に当社社長の自己開示によるストーリーテリングがあり、それを倣って私たちは配布されたフレームワークに各自が必要事項(自身が大切にしている価値観やミッション・ステートメント等)を書き込み、皆の前で発表するというもので、2日目の大半はこれに費やされました。深い内省と、他の管理者の口から発せられる新たな情報に触発され、また改めてビジョン達成に向けての使命感がわいてきました。
当社社長の木村のコラムでも書かれておりますが、今期経営テーマである「百花繚乱」実現のために必要なこと、そのために留意すべきポイントが何であるのか、といったことを気付かせてくれるかのような研修内容でした。
私たちCS本部が掲げた今期ゴールビジョンの中に「付加価値の創出」というキーワードが含まれています。百年に一度と言われる大不況の中で消費を生むためには、競争優位な商品・サービスを作らなくてはなりませんが、その商品やサービスを提供するのは「人」であり「組織」です。クライアントに提供される成果物の品質が、各個人の技能と気遣いや組織のチームワークで決定されるというのなら、今すぐに取り組まなくてはならなかった課題は明確でした。
前期より引き続いて取り組んできた諸々の施策――、部員教育のための「CS部成長のあゆみ」や「自己育成シート」、クライアント提案用に質の高いヒアリングを行い、納品後の管理を行うための「Web戦略カルテ」といったフレームワーク類、それから「制作ガイドライン」(ex.ライティング課の各種ガイドライン)や「D-sta(フリーセル・ディレクション・スタンダード)」(全社的な知識の底上げやサービス均質化のために編集した当社Webディレクションに関する標準知識体系)、「SEOポリシー」といったガイドラインやポリシーの整備、社内教育機関の設立を夢見て立ち上げた企業内大学「フリーセル大学」、全社員の個を尊重し全社共有するためのWeb社内報の開設といった体制の確立など、できる限りのことはしてきました。
しかし、これだけでは足りません。ツールや仕組みがいくら整っていても、それを使いこなすのは結局のところ「人」と「組織」であるので、より深く浸透・深耕させていかなくてはなりません。そもそも上記のような施策は、私一人で企画したものでも確立させたものでもありません。今回の合宿研修に参加している部課長たち全員の協力があって実現し、運用されているものです。今後、これらの浸透・深耕には、次世代のリーダーの出現がどうしても必要になります。その境地に至るまでの経緯を振り返ってみた際、志を一つに、皆で同じビジョンを明確にイメージしながら各組織を牽引し、自立・自律して一歩一歩諦めずに築き上げてきて今があるように思います。しかし、それには時間という大きな代償を必要としました。今後の浸透・深耕に対してはスピード感を持って臨みたいので、次に組織のリーダーとなる人たちに手伝ってもらえないものかと考えました。
皆が今よりも主体性を持って考え、実行することで、会社としての経験がある分、今までよりもスピーディーに進めることができる筈です。この「主体性」ですが、経済産業省が2006年度に行ったアンケートがあり、『企業の「求める人材像」調査| 社会人基礎力との関係』という統計が公開されていますが、大手・中小企業問わず社員に求めているコンピテンシーであることが分かります。
幸い今回の合宿研修では、それを実現するための近道が示唆されたように感じていたので、第二四半期はその点に留意しながら進めていきたいと考えています。重要となってくるのが「権限委譲(エンパワーメント)」であると思いますが、その際特に注意したい点の一つとしては、「自身のミッション・ステートメントを明確にし、自己開示する」ことです(cf.「ジョハリの窓(「Wikipedia」)」)。そうすることで、部下からの信頼を得ることにも繋がると思いますが、この「信頼」や、信頼からくる「内省(腹に落ちて理解する、自身の課題を設定できる)」こそが自発的なスピードと実行力を生み出す起爆剤になる筈と考えています。
主体的な人間として、人生の中で自分はどうありたいのか、何をしたいのかを表現することができる。これを文書にすることは、個人的なミッション・ステートメント、個人的な憲法を書くことである。
(中略)書き上げる過程が、最終的な文書と同じくらい重要だと思う。それは、ミッション・ステートメントを書く、あるいは見直すプロセスに、人を変える力があるからだ。自分の優先順位について深く考え、自分の行動と信念を統一する力があるからである。そして、そうすることによって、あなたは熱意あふれる使命感を持つようになり、周りの環境や出来事に支配されない主体性を持つことになるのだ。
/『7つの習慣』(スティーブン・R・コヴィー著)
CS本部も以前にミッション・ステートメントを掲げたことがありました(cf.「CS部とミッション・ステートメントのご紹介」)が、もう数年前になるし、今では組織やサービスも随分と高度化してしまったので、そろそろ見直しが必要かもしれませんね。
それから、権限委譲の際に注意したい点としての二つ目として、部下との接し方です。部下に対してもともと抱いているイメージがネガティブなものしかないようであれば権限委譲は遅れるだけですし、まずはそれをポジティブなものに変えてゆくマネジメントと、自身の変革とが急を要されてきます。
『なぜトヨタは人を育てるのがうまいのか』(若松義人著)という本の中で著者が回想されていますが――、
トヨタ生産方式の生みの親・大野耐一氏から仕事の指示を受けたある課長が、即座に「できません」と言ったところ、大野氏から烈火のごとく怒られたというのです。理由は、指示に対して「ノー」を言ったことではもちろんありません。その課長が自分の部下の知恵を信じなかったことにあります。(中略)
豊田英二氏がこう言っている。
「管理職のみなさんは、自分を凌駕する部下を育成していただきたい。人財こそ企業の要であり、企業の盛衰を決めるのは『人財』である。みなさん自身が厳しく己を磨き、部下から心服される管理職となり、部下が人間として大きく育つように努めてほしい」
上司は誠心誠意、育成に努める。育った若手は「自分が育てられた恩」を「自分を凌駕する部下を育てる」ことで返す。これがトヨタ流の人財育成術である。
/『なぜトヨタは人を育てるのがうまいのか』(若松義人著)
――部下を信じることが重要です。未来の強力なパートナーとして育つことを信じながら育成に励むことが、今、管理者に求められています。
今回の合宿研修参加を通じて、「百花繚乱」実現のためには人財育成が必要であるため、管理者一同で今一歩踏み込んだコミュニケーションを行ってゆくことが必要であると認識しました。まずは合宿研修参加の所感として。