松下幸之助没後20年、「共存共栄」について想う ~「社会の公器」として「定額給付金」の使い方を考える~

投稿者:小川 悟

2009/04/26 16:13

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企業は社会の公器である。したがって、企業は社会とともに発展していくのでなければならない。企業自体として、絶えずその業容を伸展させていくことが大切なのはいうまでもないが、それは、ひとりその企業だけが栄えるというのでなく、その活動によって、社会もまた栄えていくということでなくてはならない。また実際に、自分の会社だけが栄えるということは、一時的にはありえても、そういうものは長続きはしない。やはり、ともどもに栄えるというか、いわゆる共存共栄ということでなくては、真の発展、繁栄はありえない。それが自然の理であり、社会の理法なのである。自然も、人間社会も共存共栄が本来の姿なのである。

/『実践経営哲学』(松下幸之助)

2009年4月27日は、“経営の神様”と呼ばれた松下幸之助の没後20年の日にあたります。

 

cf.パナソニックミュージアム 松下幸之助歴史館 | Panasonic

http://panasonic.co.jp/rekishikan/

 

大阪のパナソニックミュージアム 松下幸之助歴史館で行われる特別展では、副題に「かつてない難局はかつてない発展の基礎となる」という松下幸之助の言葉を引用しています。

文字通り、現在の日本も歴史的な大不況を迎えています。昨年の上場企業倒産数は、2002年の29件を超え33件と過去最高を記録しましたが、今年に入ってからも不動産・建設業をはじめ、現時点で既に2008年の半数近くの上場企業が倒産しているという話を聞きます。

昨年、「パナソニック株式会社」と社名変更した旧松下電器産業株式会社も、2009年3月期の連結当期損益は3800億円の赤字になる見通しであるというニュースがあり、同じように日立製作所やパイオニアなども公的資金の出資要請を検討するほどの事態となっています。

 

かつて、白黒テレビ・洗濯機・冷蔵庫が「三種の神器」と呼ばれてから半世紀を経て、世界の経済事情や消費者のライフスタイルは大きく変遷し、今、家電業界は窮地に立たされていると言えるかもしれません。

そうしたネガティブなニュースばかりの世の中で、先の「かつてない難局はかつてない発展の基礎となる」(ちなみに、2008年10月に「パナソニック株式会社」へと社名変更を断行した、現代表取締役社長、大坪文雄氏の座右の銘は、「逆境は己を磨く天与の機会」)という言葉からは、私たちも大変勇気を与えられるような気がします。

 

そうした中、定額給付金の支給が始まりました。皆さんは何に使われますか?

この定額給付金の支給という経済政策そのものは賛否あるようですが、私個人としては決まったことの是非についてあれこれ言っても始まらないので、自己投資かレジャー(旅行)のために使わせて頂こうと考えております。

 

と、まぁそれは消費者の立場としての用途ですよね。

このWebコンサルタント.jpをお読みの方の中には、中小・ベンチャー企業で経営に携わる方も多いと思いますが、企業の見地からこの経済政策についてどう対処するかをお考えでしたでしょうか。

 

マーケティング用語に「PEST分析」というものがあります。これは、「Politics(政治)」、「Economy(経済)」、「Society(社会)」、「Technology(技術)」の頭文字を取って並べた、マクロ環境分析の考え方の一つです。つまり、それぞれの分野で起こっていることに着目して戦略を練る、もしくはこれから起こることを予測して取る対策などを決定する際の指標にできる分析手法です。

 

昨年、政府から「定額給付金」についての発表があった際、何か対策を講じられた方はいらっしゃるでしょうか。お恥ずかしながら、私は当時、真っ先に消費者としての立場でこのニュースを見てしまっていました。

 

しかし、実際に街を歩いてみると、随所で「定額給付金」に便乗したサービスを提供している場面に出くわしました。勝間和代氏の著書、『勝間和代のビジネス頭を創る7つのフレームワーク力 ビジネス思考法の基本と実践』(「知識のレベルで思考を止めない!」)にも書かれた、コンサルティングファームで問題解決・意思決定のための一つの考え方として用いられることがあると言われる「空・雨・傘」のフレームワーク――、空―事実認識(知識・理解)、雨―解釈(応用・分析)、傘―問題解決(統合・評価)――で言えば、私の思考は「事実認識」で止まっていたのです。

つまり、「定額給付金がもらえるという事実」を認識しただけで、「ということは?」という発想まで至れなかったわけです。政府の意向や消費者心理の視点でこの事象を捉え、それを自社の理念や事業ドメインと紐付けて行動に繋げてゆくというのは実際には至難の業ですが、同時に私の内にはまだ、こうした突発的なことが起こった際に、すぐに「そうであれば、こうする!」と判断する際に基準となる理念や、フレームワークのような体系化された思考がないことを自覚しました。

 

そんな心境のままネットサーフィンをしていた際、以下のようなサイトを見つけました。

 

■お買い物徹底ナビ

http://event.rakuten.co.jp/tieup/benefit/

cf.「楽天トラベル」「楽天オークション」定額給付金の支給に伴い、「12,000円」企画開始 ~「楽天市場」「楽天GORA」も順次開催~(楽天株式会社 ニュースリリース,2009年3月12日)

http://travel.rakuten.co.jp/news/4205.html

 

このサイトは、ショッピングサイト運営大手の楽天市場が企画したイベントサイトです。なんと、定額給付金支給額である12,000円や20,000円に合わせ、税込み・送料込みでジャストの価格帯の商品ばかりを集めた店舗を紹介するサイトなのです。こうした取り組みは、他のYahoo!やAmazonでも行われていますが、社会の動向に合わせて早期に企画を練り上げ、実施にまで持ってゆくのは中小・ベンチャー企業では大変ですね。

 

こうした際に、私たちができることの中で言えるのは、リスティング広告によるプロモーションでしょうか。既存のお客様はサービス・小売業の方も多く、「商戦」という言葉を多く使われます。時宜を踏まえたタイムリーなプロモーションが求められるのがこの事業の特徴です。

 

■「フリーセルECリスティング」 売れるECサイトにしませんか?

http://www.web-consultants.jp/cs/ec_listing.html

cf.2009年5月19日、【30社限定・無料セミナー】中小・ベンチャー企業向けリスティング広告基礎講座(株式会社フリーセル)

http://www.web-consultants.jp/press/0904google.html


インターネットで商品を販売することで企業や店舗は利益をあげることができますし、消費者はいつもよりお得な買い物ができるというもので、結果日本のGDPを押し上げることにも繋がります。

 

いずれにしても、共存共栄ということは、相手の立場、相手の利益を十分考えて経営をしていくということである。まず相手の利益を考える、というといささかむずかしいかもしれないが、少なくとも、こちらの利益とともに相手の利益をも同じように考えることである。それが相手のためであると同時に、大きくは自分のためにもなって、結局、双方の利益になるわけである。

/『実践経営哲学』(松下幸之助)

 

冒頭で松下幸之助の著書について触れましたが、私が所有するのはPHP文庫版のものです。思わず書棚に揃えたくなるような各色違い、上質紙のカバーが消費者心理をくすぐり、私も例に漏れず数冊まとめ買いしてしまったものでした。

 

不景気になっても、志さえしっかりともっていれば、それは人を育て、さらには経営の体質を強化する絶好のチャンスになると思うのです。

/『経営心得帖』(松下幸之助)


不景気にはまた不景気に対処する道がおのずからあると思うのです。(中略)たとえば、昨年は忙しくてほうっておいたアフターサービスを、この際徹底的にやろうとか、お店の整備を積極的にはかろうとか、いわゆる甘い経営を排していろいろな方策を考える。それも、他力に依存することなく、自分がこれまでにたくわえた力によって一つひとつ着実に実施していく。

/『商売心得帖』(松下幸之助)

 

以上のように、いくら不景気であっても、自社のことはもちろん消費者のことでも、考えに考え抜いて改善に向かわせることはいくらでもできる筈です。

 

また、松下幸之助が唱えた企業の三つの成功条件というものがあります。それは「絶対条件」、「必要条件」、「付帯条件」と呼ばれるもので、それぞれ「経営理念の確立」、「社風」、「戦略と戦術」としており、成功要因を占める割合を、経営理念の確立が50%、社風が30%、戦略と戦術が20%としています(『理念経営のすすめ 成功する会社の経営理念と戦略』/田舞徳太郎著)。

 

私たちフリーセルの企業理念や中期経営ビジョンにも、この「共存共栄」が謳われています。

 

■企業理念 | 会社案内 | 株式会社フリーセル

http://www.freesale.co.jp/company/vision/

 

松下幸之助没後20年、改めて「共存共栄」という企業理念に立ち返り、私たちのお客様とともに企業を発展させていきたいと思いました。