iモード10周年、ビジョン達成に向けた不断の努力こそが市場開拓・顧客創出を実現する成長エンジン ~第8期末社員総会を終え、今期を総括する~
投稿者:小川 悟
2009/03/29 20:22
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「十秒前です」
笹川が時計を見ながら叫ぶ。
「八、七、六……」開発チーム全員の声が揃う。
「三、二、一、〇。やったあ!!」
二月二十二日零時、iモードは歓声とともにスタートした。
/『iモード事件』(松永真理著)
本日、当社第8期末の社員総会兼社員旅行から帰ってきました。いよいよ今期も残すところあと2日です。1日には09新卒の入社も控えています。迎え入れる側の私たちの方も、新たなゴールビジョンが提示され、新体制で来期に臨みます。本件については次月にまた、別途お伝えしたいと思います。今回は第8期を総括する意味も込めて成果の棚卸しをするとともに、当社のどのような部分が成長エンジンとなっていたのか改めて認識し、来期1年間を突っ走るための原動力としたいと個人的に試みてみます。
さて、2009年2月22日は、NTTドコモの「iモード」サービスが開始されてからちょうど10周年でした。
cf.
・iモードが10周年、ドコモが期間限定サイトをオープン–懐かしのCMなどを配信(CNET Japan)
http://japan.cnet.com/mobile/story/0,3800078151,20387918,00.htm
・iモード10周年、いま体験すべきコンテンツは?(ASCII.jp)
http://ascii.jp/elem/000/000/213/213077/
・iモード10周年、ドコモが目指す“魔法のランプ”への戦略
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/44053.html
・こんなものもありました–iモード10周年、黎明期の名機を振り返る(CNET Japan)
http://japan.cnet.com/mobile/story/0,3800078151,20388765,00.htm
・EZwebがサービス開始10周年――KDDI、4月から特別キャンペーンを実施(ITmedia +D モバイル)
http://plusd.itmedia.co.jp/mobile/articles/0902/20/news062.html
今でこそ、登録者数で言えば5000万人近くを誇る、日本最大のISP(インターネット・サービス・プロバイダー)ではありますが、その記念すべき誕生からもう10年が経つのですね。
cf.
・契約数月次データ : 携帯電話等契約数(NTTドコモ 企業情報)
http://www.nttdocomo.co.jp/corporate/ir/finance/subscriber/
・ドコモ、iモードをギネスブックに申請(ITmedia +D モバイル)
http://plusd.itmedia.co.jp/mobile/articles/0603/10/news082.html
・クロニクル「インターネット業界10年史」 ~まるでビッグバンのように、超高圧な一点の意志からその広大無辺な市場は生まれた~(「Webコンサルタント.jp」コラム、『Webコンサルティング表象文化論』より)
http://www.web-consultants.jp/column/ogawa/2008/02/10.html
「えっ、『とらばーゆ』の編集長がとらばーゆするの?」
/『iモード事件』(松永真理著)
この「iモード」の開発には、元リクルートで『とらばーゆ』編集長を務め、現在は株式会社バンダイ取締役を務めておられる松永真理氏と、「リクルート時代に学生アルバイトとして編集の手伝いをしてくれた学生」であり、その松永真理氏をして「彼こそ、iモードの成功に大きな貢献をするキーパースン、重要人物の一人になる」と言わしめた、現在ドワンゴの取締役を務められている夏野剛氏を主要としたプロジェクトメンバーが携わりました。
こうしたビジネス上における成功譚(サクセスストーリー)というものは、現在の世の中の状況から過去を顧みて編年体に並べ直すことで初めて”物語”になるわけで、実際の開発段階においては苦労の連続であったろうし、今後も新たな状況に打ち勝ってゆくために様々努力をしなくてはならないのは当然にしろ、必ず私たち部外者にとってはあまり知る由もない前史に当たるものがあるものです。
東京と大阪を何度も行ったり来たり、緊張と新幹線のなかで細かい文字を見過ぎたせいもあり、同乗したIPのなかには帰路につく頃吐き気を催した人もいたという。新幹線と同時に山手線のなかでも同様の試験が繰り返される。評価機を押しながら、何十回と山手線を回っているエンジニアたち。想像するだけで目が回るようだ。
/『iモード事件』(松永真理著)
iモード誕生の1ヶ月後の1999年3月25日、NTTドコモグループは、「ドコモ2010年ビジョン『MAGIC』――モバイル・フロンティアへの挑戦――」を策定し、発表しました。この長期ビジョンは、1997年7月頃から経営企画部のメンバーが事務局となって検討が進められていたものとのことです。経営トップの意向により「社員の参画」が強く要請され、第1次案にはグループ各社延べ300人以上の社員がディスカッションに参加し、最終的にはこの「MAGIC」が経営会議で決議されました。それから、この「MAGIC」策定の後に、ビジョンを実現するために、「ドコモ社員の行動原則 『DREAM』」が社内に公開されました。
【5つの事業の柱 「MAGIC」】
M: Mobile Multimedia(モバイルマルチメディアの推進)
A: Anytime, Anywhere, Anyone(いつでも、どこでも、誰とでも)
G: Global Mobility Support(グローバルにサポート)
I: Integrated Wireless Solution(ワイヤレス技術でソリューション)
C: Customized Personal Service(個々人の情報生活支援)
【ドコモ社員の行動原則 「DREAM」】
D: Dynamics(変化に挑む)
R: Relationship(コミュニケーションの輪を広げる)
E: Ecology(環境保全に貢献する)
A: Action(まず、行動する)
M: Multi-View(広い視野と長期的視点から考える)
/『NTTドコモ10年史 モバイル・フロンティアへの挑戦』(NTTドコモ10年史編纂事務局)
未踏の地をビジネスチャンスと捉えながらも、現状に満足せず、まだ見ぬ未来を予見し、来るべき危機に備えて中長期のビジョンを策定し、打ち立てた行動指針にのっとって、全社員が掲げたゴールへ向かって邁進する――、そのフロンティア・スピリットこそがある種の成功法則、言い換えれば勝ち癖のようなものではないかと思います。初めのうちは皆で打ち立てた指針が、何となくよそよそしく照れ臭いこともあるかもしれません。それが正解か不正解かもよく分からないままにスタートするものかもしれません。しかし、こうして一つ大きな成功をした後に振り返ってみれば、「あのときに気付いて本当に良かった!」と思えることは、日々の仕事の中にもたくさん転がっている筈です。
思えば今から1年前の2008年3月27日は、当社初の監修書籍、『「Webコンサルタント」という選択』が発売された日でした。今でこそ「Webコンサルティング」という用語はネット市場に時折見かけるようになってきたものの、あの頃はまだ他社で明確に表現しているところが少なく、プロジェクトメンバーの間で定義するにも大変苦労したものでした。社名を出して声高らかに自社方針を打ち出せば、それに賛同頂ける方と同じくらい反対する方もいたことかと思います。いつの時代も新しい概念には反作用が働きます。特に名前が売れてくればくるほど、市場の中で影響が大きくなればなるほど、社会からの風当たりが強くなることは十分承知した上で、当社もある種腹をくくった時期だったのかと思い返します。
その後、第一四半期を終えて今期ゴールビジョンを改めて全社員で共有(cf.「第8期第一四半期社員総会を終えて ~ゴールビジョンを明確に言語化し、共有する~」)した後は、続く第二四半期(cf.「クリエイターは消費者の夢を見るか? ~第二四半期末社員総会を終えて~」)、第三四半期(cf.「再読、『ザ・ゴール』。 ~エリヤフ・ゴールドラット氏来日! ~”生産的”であるとは何か?~」)と怒涛の如く次々に迫り来る試練を乗り越えて今に至ります。
絶対絶命!と思う程の大きな壁を前に、とにかく、「”そこに行こう!”とゴールビジョンを掲げてしまったのだから行くしかない」という気持ちでやっとの思いで一つ壁を越えたと思ったら、今までとは比較にならないようなスケールの壁にぶち当たり、ここで挫けようと思えば一気に堕落していってしまうような、そんな成か否かの二択を常に迫られながらブレイクスルーを続けてきた今期だったように思い返します。また、その過程の中で、もちろん私自身は多くのことを学んだのですが、何よりも部内のスタッフをはじめ会社全体でいろいろな体験を経て、学べたことは大変多かったのではないでしょうか。
少人数で業界の常識に立ち向かうのです。ありえない、と思われることに挑むのです。絶対無理かもしれない。でも、コイツらのために何かやってやりたい、逆に、無理だという挑戦をあえてやってやろうじゃないかと思いました。それに、もし実現できたなら、世の中に何らかの一石を投じることができるかもしれないと思いました。
/『「R25」のつくりかた』(藤井 大輔著)
ビジョンというものは、誰だって実際に目にしたことのない「未来の姿」です。「こうなりたい」という願う強い信念が生み出す概念です。そこに必ず行けるかどうかは誰も断言できない筈のものです。しかし、一度掲げた以上は、そこにたどり着くために絶対に諦めてはいけないし、歩みを止めてはいけないものでもあると思います。
先日のWBC決勝で、延長10回表2アウト、ランナー2塁3塁、粘った末の8球目を捉えたイチローのセンター前決勝タイムリーヒットに感動を覚えた人は多いと思います。優勝インタビューでイチローが述べたコメント――、「苦しさから辛さになって、辛さを越えたら今度は痛みが来て、心がね(中略)。一つ壁を越えた」は、この時期とても印象的でした。
あのイチローが苦しみながらも、「最後には笑顔になれた」と。私たちも今期期初には「飛翔」をテーマに、当社常務がこれでもかと思うほど遠くにボールを投げるかのように、ゴールビジョンを掲げました。まだまだ課題は残したものの、まずはこの度の社員総会を「笑顔」で締めくくれたことは大変良かったですし、それから、掲げたゴールビジョンへ対する達成度に確信が持てたことは、私たちにとって大変自信に繋がりました。
来期は今期の「成功体験」を元に、CS部員一人ひとりがもっと自信と責任を持って、お客様へ納品する成果物に対する意識を高めていこうと考えています。何の思いもないところに、ある日突然結果が舞い降りてくることはないでしょう。第8期末の社員総会を一つの通過点として、現状を築き上げてきた「ゴールビジョンの策定」と、その達成に向けた「不断の努力」を私たちの成長エンジンとして、来期は今期以上にイノベートされた組織体制とサービスを構築していきたいと思っています。
一部の歯車を動かした後、さらに大きな回転を生み出すにはどうすれば良いか。次なる潤滑油は「成功体験」である。
/『ア・ラ・iモード iモード流ネット生態系戦略』(夏野剛著)