特許庁の55億かけたプロジェクト失敗から気付き、学んだ事。

投稿者:制作部

2012/02/06 14:35

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今年1月に見かけたニュースでは、相当インパクトの大きなものでした。
経済産業省発行の調査報告書(http://www.meti.go.jp/press/20100820003/20100820003.html)、100ページ近いですが拝見しました。
本件は、開発に至る前の設計のところまでしか進捗しなかったようです。
発足から6年も経過して、設計すら終わらないというのはどういう事なのかと思ったのですが、今回のプロジェクトの規模が大きすぎたというのがまずあると思います。
特許庁の業務に関わる部分は秘密事項に当たるためシステムの全容はわからないのですが、報告書の中にあった検査項目から規模感が垣間見えた気がします。
チェック項目だけで、数万点という規模。関わった設計関連の人員が1000名以上。
これだけでも、とてつもなく大きなプロジェクトだとわかります。

システムの設計という事で一般論で考えますと、お客様からご要望をいただき、そこから業務要件・利用者要件・機能要件をまとめた要求仕様書の策定。
要求仕様書から、概要仕様書・基本仕様書・詳細仕様書などをおこしていきます。
それぞれ仕様書の中では、ソフトウェアにあたる部分だけではなく、それらを取り巻く環境としてネットワーク仕様・ハードウェア仕様なども含まれています。
各々仕様書が仕上がってようやく開発コーディングに入っていくわけですが、開発の前段にある設計がしっかりできてないとシステム構築はできません。

家に例えると、家を建てたい施主とそれを仲介する不動産会社、施工する工務店の関係ややりとりに近しいのではないでしょうか。
施主は、どのような家にしたいかをイメージし、不動産会社で相談します。
そこから、住む場所や家の構造について大枠を決めていきます。
ここまでは、要求仕様書といってもいいかもしれません。
次は工務店へ相談します。
施主と不動産会社が打ち合わせして決めた要件から工務店は家の設計書を作ります。
工務店が設計書を作って一度家を作り始めてしまったら、施主が「あ、やっぱり、強度を高めたいから鉄骨にしてほしい」などと言っても最早手遅れなのは言うまでもありません。
だからこそ、それに至る要求の定義というのがいかに重要かがわかります。

冬ならストーブやこたつを設置したり、夏なら風鈴が奏でる音を楽しむ。
家族が増えれば、増築を行い居住空間を広げる。
数十年住み続けた末に、リフォームもしくは建て直す。
このように、シーンに合わせて変更をしていくを想定した場合、情報の骨格と鮮度を意識すると良いと思います。

Webサイトを構築した後に、家で言うと階段の位置を変更するような構造変更を行う事はまずしないと思います。
骨格を不用意に変えてしまうと、全体の構造に無理が生じてしまいます。
逆に、情報鮮度的にキャンペーン情報や、商品情報などこまめにメインテナンスした方が望ましい情報もあります。
Webですので気軽に修正を出来てしまう部分は多いですが、骨格部分には触れず情報鮮度を高く保つ必要がある部分だけに注力していく事で、効果的な運用が出来ると思います。
そうするためには、やはり初めの要件定義がもっとも重要となるわけです。
要件を的確にまとめ上げ、お客様の意に沿うように初めにしっかり設計する事が、Web戦略を成功させるポイントではないでしょうか。
掲題にあるプロジェクトでは、すべての要件を取りまとめられるだけの優秀な要求アナリストの存在が不可欠だというのが一般論かもしれません。
業務に精通し、コミュニケーションがとれて、技術にもある程度精通ししていなければ、成功は難しいでしょう。
また、その先にあるプロジェクトマネジメントも大きな要素を締めています。
1,000人規模のプロジェクトですから、誰が何をいつまでにどうやって作るのかなども詳細に把握する必要があるでしょう。
特許庁のプロジェクトが失敗してしまった原因の真相がどうなのかはわかりませんが、報告書を見る限りは設計部分で上手くいかなかったとありましたので、ここから学べるのはご要望をしっかりヒアリングし、設計をしっかりやる事や関係部門との連携は巨大なプロジェクト程、密に行う必要があるという事でしょう。

 

【編集担当:紀井】

Webシステム開発