テキスト編集の技術(1)|「カナ表記の専門用語・略語」と「ユーザーの理解度」は合っていますか?

投稿者:コンテンツ編集課

2010/04/29 19:14

この記事は約4分で読むことができます。

ニュース記事やWebサイトの文章、製品マニュアル、メールマガジンなどを読んでいて、たった1つ単語の意味が通じないだけで内容全体が掴めなくなってしまったということはありませんか? それによって理解を諦めたことはありませんか?

知識不足のせいなのか、私は結構あります。強い興味があれば、ネット辞書などで調べて理解するのですが、そこまで強い関心がなければ諦めてしまいます。一般ユーザーの場合も同様で、多くは「読み飛ばす」か「読まない」という選択をすることになるでしょう。「分からないなら調べろ」は通用しません。

そこでユーザーの理解を助けるために、原稿制作時に特に意識しておきたいのが「専門用語」や「略語」の取扱い方です。「専門用語」や「略語」は、論旨を決定するキーワードとして使用されることが多いので、これらを理解できないと全体の意味が通らなくってしまうのです。

中でも最近頻繁に使われるようになった「外来語のカタカナ表記」には取扱い基準が必要でしょう。もちろん、「外来語のカタカナ表記」を推奨しないと言っているわけではありません。むしろ、「外来語のカタカナ表記」を利用することで日本語表現のあいまいさを避けることができます。

例えば、「動機」と言うより「モチベーション」と言った方が、「双方向性」と言うより「インタラクティブ」と言った方が、意味さえ理解されていれば、明確に意図が伝わるでしょうし、短いセンテンスで表現できるため、文章が冗長にならないという利点もあります。大切なのは、基準を作って正しく選択することです。

では、言葉の選択において一番大切な基準とは何でしょうか?

それは「ターゲットになるユーザーの理解度」です。業界内では通用しても、一般ユーザーに向けた言葉としては難解だと取られる言葉も少なくありません。つまり、「知っている人は知っている」言葉に注意を払うことが大切になってきます。私たちの周りには、思ったよりも多くの「外来語のカタカナ表記」が存在しています。

(例)ターゲットによって専門的か一般的か分かれそうな言葉

・アセスメント
・インフォームド・コンセント
・ワークショップ
・ユーザビリティー
・スクーリング
・ダンピング
・ジェンダー
・オブザーバー
・インキュベーション
・イノベーション
・コンソーシアム
・タスクフォース
・アナリスト
・メセナ
・エンフォースメント etc……

文化庁が毎年行っている「国語に関する世論調査」では、カタカナ語の認知度・意味の理解度・使用度を調査しているので参考にしてみるといいでしょう。  ※文化庁ホームページ


■「専門用語」や「略語」の脚注として

あいまいさを避けるために、どうしても「外来語のカタカナ表記」を使用したい場合は、主に以下の方法を取ることでユーザーの理解を助けることができるので参考にしてみてください。

(1)脚注の利用
文章中の専門用語や略語の前に「※」や「*」を挿入して、ブロックの最後にまとめて用語の説明を記載することで、ユーザーの理解を助けます。紙媒体などでは一般的に利用される手法です。

(2)省略タグの利用
<abbr>要素を利用することでブラウザ上では点線で示され、略語であることを明示できます(title属性によって正式表記を表示できます)。こちらはWeb ならではの手法です。しかし、IE6以降でサポートされていないなど、無効なケースがあるので注意しましょう。

印刷出版物を取扱う、編集プロダクションや新聞社ではごく当たり前に意識されている「カナ表記の専門用語・略語の取扱い」ですが、Webサイト制作でも同じようにユーザーの理解度を示す基準として重要なものです。

制作者側と依頼側(クライアント)が意志疎通を図る上でも有用なので、ぜひコンセプトワークやコンテンツ立案の際に方針を決定することをお薦めします。

 

【編集担当:松岡】

Webライティング