「多言語サイト構築」黎明期における8つの課題

投稿者:コンテンツ編集課

2011/02/28 10:48

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「海外市場に活路を見出すための多言語サイト」
「訪日外国人をターゲットにした多言語サイト」
「全世界に向けたグローバルな多言語サイト」


2011年は大小問わず日本の企業において多言語サイトの開設が急速に進む年になりそうです。国内の消費の低迷、訪日外国人に対するニーズの拡大、途上国を含めた海外でのインターネットの普及、外資系企業の日本国内への進出──こうした状況を考えると多言語サイトの構築はマーケットを拡大の光明になる可能性を持っているのです。まだまだ黎明期(競合が少ない)であるが故、業種によっては予想以上に強力な武器となるかもしれません。


◆上場企業の英語ウェブサイト保有率は73%、進む中国語化対応-上場企業1732社のコーポレートサイト外国語対応状況の調査レポートを発表(アークコミュニケーションズ
http://www.arc-c.jp/info/press/101013.html


ところが、こうした企業側のニーズとは裏腹に多言語サイト構築のノウハウ・方法論は業界的にまだまだ整備されていないのが現状。企業側、制作会社側、双方ともに多くの課題を抱えながら走り出してしまっているというのが本音ではないでしょうか。


ということで、今回はそんな黎明期における多言語サイト構築の課題を明らかにしておきたいと思います。まずは現状の問題点について。

 

・多言語サイト構築におけるスタンダードが確立されていない
・ローカライズを意識したマーケティングが不十分である
・企業側、制作側、双方で知識・体制・リソースが不十分である
・多言語での統一したブランディング戦略が考えられていない

 

多言語サイトの構築は、単に日本語を翻訳するという発想では上手くいきません。マーケットやターゲット、国や地域特有の共通認識、承認ルート、品質チェックや運用の体制などがまったく異なるうえに、日本語サイト以上にクライアント側と制作側との意思疎通が必要とされるなど、通常サイトの多言語版という認識ではまず失敗します。

 

比較的低コストで「グローバル展開ができる」という思いとは裏腹に、なかなかハードルが高いのです。では具体的にどのような課題が考えられるのか基本的な部分を考えてみましょう。

 

(1)マーケットの理解
日本語サイトはあくまで日本人や日本のマーケットを想定したサイトであり、単に日本語を翻訳しただけでは機能しません。多言語サイトにおけるマーケットを想定して、そのマーケットにおける商品のニーズや企業の認知度を把握したうえでWeb戦略を立案する必要があります。日本語サイト構築時の常識は通用しません。


(2)ターゲットの理解

ターゲットが異なる以上、企業ブランドの認知度や商品・サービスのトレンドポジションが異なります。日本では有数の大手企業であっても、ある国ではほとんど認知されていないというケースも多いはずです。また国や地域によってNGワードや訴求できる言葉は異なり、それらを知っておかなければなりません。

 

(3)複雑な制作工程
簡単に言うとライティングにおける工程が複雑になります。翻訳作業が加わることはもちろんですが、翻訳前にライティングの調整作業が必須です。日本語特有の曖昧な表現や固有名詞・人名など日本人にしか伝わらない言葉はミス翻訳の元。事前に原文を調整するなど、翻訳後のテキストを考慮するためのライティング工程は欠かせません。

 

(4)運用体制の考慮
Webサイトのゴールを設定する際には、必ずクライアント側の体制を意識しなければなりません。日本語サイトでは当たり前だったことが通用しないケースも多いのです。更新や修正といった運用を考慮したコンバージョン設定や仕様(どのCMSにするか等)の選択が必要になります。

 

(5)想定する国や地域のネット環境への配慮
日本から海外へ向けた多言語サイト、訪日外国人をターゲットにした多言語サイトであれば問題ありませんが、海外、特に途上国で運用する場合は、その国や地域におけるネット環境やルールを熟知しておかなければWebサイトが機能しない、通信さえままならないなんてこともありえます。

 

(6)ローカライズを意識したデザイン
事実として国や地域によってデザインに対する感覚は異なります。日本の企業が海外向けのサイトを作るのか、外資系の企業が日本語サイトを作るのか、また承認プロセスにおけるイニシアティブは誰が握っているのか等により、ローカライズにおける方向性が異なります。サイトの目的を明確にしたうえでのデザインが必要です。

 

(7)SEO・SEM等の海外プロモーション、ホスティングの考慮
多言語サイトを構築するとなると、当然ながら海外でのプロモーション戦略についても考慮しなければならないでしょう。例えば中国などではファイヤーウォールの問題により、現地でホスティングしなければ上手くいかないと言われています。SEOやSEM、バイラルマーケティングなど、国や地域によって事情が異なる要素について、事前に現地の情報を仕入れておく必要があります。

 

(8)予想以上にかかるコスト
上記(1)~(7)のように、多言語サイト構築は、制作以外の観点、特にマーケティング、ライティング(翻訳)、その他諸々の周辺情報への考慮なども含めて、ひとつのプロジェクトとして捉えておくべきです。よって制作費においても納期においてもある程度の余裕を持っておかなければならなりません。

 

ざっと多言語サイト構築における課題について取り上げてみましたが、「サイト制作」の範疇を超えて、プロモーションも含めたWeb戦略全般について考慮しないと成立しないため相応の大変さが伴いますが、間違いなくクライアント企業にとっても制作側の企業にとってもチャンスの大きい分野。早めに準備しておくのが吉です。

 

【編集担当:松岡】

Webコンサルティング